Global Strategy to Prevent Transnational Corporations
and Other Business Enterprises from Violating Human Rights

会議設定

会議監督 佐藤智哉(大阪大学 4年)
議題 Global Strategy to Prevent Transnational Corporations
and Other Business Enterprises from Violating Human Rights
議場 Human Rights Council
使用言語 公式/非公式/決議=英/英/英
設定日時 2017年12月

会議監督からの挨拶

 こんにちは。この会議で会議監督を務めさせていただく、大阪大学法学部4年の佐藤智哉と申します。
 この会議は、「ビジネスと人権」という、普段の国家だけで行う会議とは少し異なる議題を取り扱います。
 この会議は、初心者から熟練者まで、すべての大使に充実した議論を体験していただける環境を整えています。入念にじっくり準備して挑む英語会議はどんなものか腕試しをしたい方々。現時点での実力は、英語力を含めて一切問題とはなりません。
 フロントは、みなさんのやる気に応える準備があります。フロント一同、参加をこころよりお待ちしております。

会議コンセプト

 この会議のコンセプトは、“Challenge the Unchallenged”です。これには、二つの意味があります。「多国籍企業の人権侵害」という問題は、「国家」ではなく「企業」をいかにコントロールするかという問題であり、国際社会においては、いまだ明確な答えが出されていない問題です。多くの議論の進展があるものの、現在もまだ解決し切れていない問題に挑んでいただきます。
 二つ目は、参加者にとっても、この議題にチャレンジすることは、模擬国連活動の中でも未知の挑戦となると考えています。この会議では、参加者として、国家に加えて、多国籍企業とNGOを加えています。国家といっても一枚岩ではなく途上国と先進国では利害がまるで異なり、途上国同士でもその国がどう外資系企業と関わっているのかで、利害が異なります。先進国同士でも、企業の規制への考え方は異なります。
 このような複雑な利害関係が存在する中で、「どの点ならば合意ができるのか」を探らなければいけません。模擬国連の中でも、間違いなくチャレンジングな議題であると私たちは考えています。

議題・議場解説

   この会議の議題は、「超国家的企業及びその体系の企業の人権侵害行為を防ぐためのグローバル戦略」です。
 まず、「超国家的企業の人権侵害」とは何を指すのでしょうか。具体的な例を見てみましょう。たとえば、2014年にはインドで、某清涼飲料水メーカーが地下水を過剰使用したことにより、周辺の村民、或いは農民の水へのアクセスが困難になったとして工場操業停止の判決が出ました。また、2015年には、某食品メーカーが製造するチョコレートのカカオが、児童労働を含む農園から調達されているとして、厳しい批判に曝されたという事例がありました。このように、国家ではなく、多国籍企業の営利活動のプロセス内部で人権侵害が起こっていることが、「超国家的企業の人権侵害」という問題です。
 この問題は、1970年代から国連で問題視されていたものの、先進国の強い反発があり、長い間目ぼしい進捗がありませんでした。しかし、次第に市民社会からの批判が無視できないほどに大きくなり、これを受けて、2011年に国連人権理事会において「ビジネスと人権侵害に関する指導原則」が公表されました。この後、直近数年間の間に欧州諸国を中心に、自国企業に対して人権尊重の取り組みを義務付ける国内法を制定する取り組みが行われています。このように、「多国籍企業の人権侵害」を取り巻く環境は、ここ数年の間に激変しています。とてもタイムリーな議題です。
 このような議論をする舞台となってきたのが、Human Rights Council(国連人権理事会)です。ここでは、国家以外の様々なアクターも議論に参加し、人権に関する専門的な話し合いが行われてきました。

論点解説

 この会議では、「超国家的企業の人権侵害」へのアプローチを考える視角として、二つの論点を設定しています。
 第一に、「人権デューデリジェンスの徹底」という論点です。「人権デューデリジェンス」とは、企業が、それ自身の営利活動によって人権侵害を引き起こさないために、予防的にそのサプライチェーン内部の状況の調査、把握そして是正する取り組みのことを指します。欧米諸国の中には、調査・報告義務を負わせる国内法を有する国家もあります。しかし、日本にはこのような制度はありません。
 この論点では、国家を超えて活動する多国籍企業の人権侵害を食い止めるためには、企業に対してどのような努力を、どのように義務付けていくべきなのかを、この論点では話し合ってもらいます。
 二つ目は、「効果的な救済へのアクセスの実現」という論点です。この論点では、人権侵害が起こってしまった後に、その被害者が裁判やその他の手段を通して、救済を受けられるようにするにはどうしたらいいかということを話し合います。
 たとえば、途上国で人権侵害を被った人がその自国内で訴えようとしても、そもそも法整備が不十分でないため諦めるしかないという状況に追い込まれるということが起きています。また、企業の本社が存在する先進国に訴えるにしても費用が掛かりすぎて訴えられないということも、多くの人権侵害被害者が直面しています。
 あくまでこれらは問題の一部ですが、この論点では、人権侵害被害者が直面している救済へのアクセスに関する様々な障害をどう乗り越えていくのかを話し合ってもらいます。

求める参加者像

 議題を見て興味を持っていただいた方ならば基本的に誰でも楽しめる議題ですが、以下のようなことがしたいと思っている方にはとてもあっている会議だと思います。
 ●交渉力を鍛えたい人
 この会議では、厳しい利害の対立が存在し、かつ、二項対立という単純な対立図式ですらありません。自分の実現したいことを実現するために、誰に働きかけ、どう説得していくのかを戦略的に考える必要があります。
 ●身近な問題を考えたい人
 普段の模擬国連の活動よりも、この会議が扱う問題はかなり身近な問題です。今日飲んだコーヒー、使っている電子機器、着ている服などあらゆるものが今や世界中で生産されており、知らないうちに人権侵害的な状況で作られた製品を使ってしまっているかも知れないのです。この議題を勉強することで、買い物での日常での視点が変わると思います。
 ●困難な問題にチャレンジしたいひと/英語力を鍛えたい・試したい人
 もっと漠然と、「特に関心のあるテーマは見つからないが、知的好奇心をくすぐられる問題にじっくり取り組んでみたい!!」「英語で議論をとにかくやりたい!たくさん話したい!」と思うひとにもこの議題はおすすめです。議題解説書やタスクを通じ、十分なインプットをして、会議に臨んでもらいます。
 勉強会やSkypeでの交渉練習も行います。スピーチの添削も行います。本番で躍動してもらうために、議題の理解も英語の準備もフロント一同しっかりサポートします。

国割

*オブザーバー ※原則ペアデリ制(シングル参加も可)
※シングル参加を希望される場合、応募時にその旨を(ペア希望欄等に)書いてください。
※シングル希望の方は一国のうち一論点を割り振られることになります。(会議は二つの論点が完全に独立して進むため)

国選びのポイント

 この会議では、国、多国籍企業、そしてNGOの三つの役割を用意しています。以下では、それぞれのアクターについてどのような人におすすめなのかについて情報提供をしたいと思います。
 まず、国家ですが、大きく分けて二つの種類の国家が議場には存在します。ひとつは、途上国を中心とする多国籍企業の人権侵害を食い止めるための強い規制を求めていくグループであり、もう一つは、先進諸国を中心とする、自国に多くの多国籍企業を抱えていることから、規制に対して慎重な姿勢を見せているグループです。
 規制を推進する途上国を担当する大使は、先進諸国及び多国籍企業に対して、規制の進展の必要性を説明し、提案に巻き込んでいかなければなりません。そのため、対話相手を巻き込んでいく能力を鍛えたい、試したいと思っている方々が楽しめる役割だと思います。
 次に、先進諸国を担当する大使は、会議のなかで、どこまでの規制ならば実現可能なのかということを念頭に置き、対話することが求められます。勘違いしていただきたくないことは、先進諸国は何もしていないというわけでは決してなく、国内に企業の行動を監視する枠組みを整備していく国も存在しているということです。自国の企業が人権侵害に加担している事実は、先進諸国の政府にとっても好ましいことではありません。問題は、何をどこまでするのかという程度問題です。このため、先進諸国を担当する大使は、自国の企業のビジネス環境や政策をしっかり分析し、厳密に考える機会を持ちたい方に向いていると思います。
 そして、多国籍企業についてです。会議のなかでの多国籍企業の役割は、企業からの視点を議論のなかできちんと主張していくことです。この役割は、「ロジカルに自分の意見を説明する」あるいは「相手の意見を批判する」能力を鍛えたいひとに特に向いています。企業以外のアクターがいろいろな提案をしてくるなかで、「適切な防御」をすることが求められます。
 最後に、NGOです。NGOは、その独特の立ち位置から、企業との利害関係を有しないという強みを生かして、議論を進めていく役割を担うことになるでしょう。他の参加者に自分の意見を情熱的につたえ、巻き込み、うねりを作りだす経験をしたい方に向いています。

フロント紹介

会議監督/佐藤 智哉/大阪大学/4年/神戸研究会
副会議監督/村田 雅/上智大学/4年/四ツ谷研究会
議長/Fahmida Faiza/ロンドン大学
秘書官/松田 大輝/東京大学/4年/駒場研究会
秘書官/植田 奈菜子/神戸市外国語大学/4年/神戸研究会
報道官/Lee Shing Hoo/大阪大学/1年
報道官/Maria Gunji/大阪大学/1年