CBD締約国会議

概要 会議テーマ 議題・論点説明 フロント紹介 大会企画 国選びのポイント

概要

議題(英語) Access to Genetic Resources and the Fair and Equitable Sharing of Benefits Arising from their Utilization
議題(日本語) 遺伝資源へのアクセス及びその利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分
議場 生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)
ABS非公式協議グループ(Informal Consultative Group: ICG)
扱う年代 2010年
設置国数(募集人数) 20か国(ペアデリ)=40人、オブサーバー有り
使用言語 公式:日本語・英語 / 非公式:日本語・英語 / 成果文書:英語
会議監督 安良城桃子(東京外国語大学国際社会学部 4年)
木村良介(一橋大学法学部 4年)
議長 久慈茂(東京大学経済学部 4年)
一柳優美香(早稲田大学政治経済学部 3年)
秘書官 鈴木泰造(中央大学法学部 4年)
長谷川賀子(立命館大学法学部 2年)

国割

Australia
Brazil
Canada
China
Costa Rica
France
Germany
India
Indonesia
Japan
Kenya
Malaysia
Mexico
Namibia
New Zealand
Norway
Peru
South Africa
Switzerland
United States of America (オブザーバー)

会議テーマ

シンプルに「交渉」を楽しむ。

この会議は、「会議で一つの合意文書を作成すること」を目的としています。参加者の皆さんには、自らの政策を主張すると同時に、交渉を通して一つの合意文書を作るために奮闘して頂きたいと思います。

その実現のため、この「目的」に関係ないことは極力排除して、「シンプル化」を意識して設計したのがこの会議です。参加者が合意文書の策定に集中しやすいように、スピーチの非公式化・コンセンサス方式・ペアデリ制などといった工夫を凝らしました。

模擬国連に対して参加者が求めているものは、人によって様々であると感じています。そこが模擬国連のおもしろいところでもありますが、私たち会議監督は、交渉する「楽しさ」に魅力を感じて活動を続けてきました。

議題と論点に真剣に向き合って方針や政策を構築する瞬間・政策を表明して交渉相手の反応を伺う瞬間・意見同士が激しくぶつかり合う瞬間・その衝突を乗り越え意見をすりあわせ、議場としての結果を出す瞬間…。これらのプロセスを、めいっぱい充実させるために必要なのは、あえて「シンプル化」という工夫を凝らしたこの会議であると考えています。

求める参加者

目標が見える会議がしたい方
合意文書策定という明確な目標に集中できる会議です。

文言交渉が好きな方
文言交渉に集中しやすい会議です。

もっと積極的に会議に挑戦したいと感じている方
今の実力は問いません。もっと会議を楽しんでみたい方の参加お待ちしております!

議題・論点説明

議題説明

医薬品、食料、化粧品、エネルギー等、私たちの身の回りにあるたくさんのものが、遺伝資源によって作られています。遺伝資源とは、現在あるいは潜在的価値を持つ遺伝素材のことです。遺伝素材とは、遺伝の機能的単位を持つ全ての素材のことであり、主な例としては植物、動物、微生物などがあります。
しかし、ある国に存在する遺伝資源を他国の企業が持ち出し開発したときに生じた利益を資源提供国に還元する国際法は従来存在していませんでした。利益配分についての制度整備の必要性が高まる中、1992年に採択された「生物多様性条約」第15条において、遺伝資源の利用によって生じた利益は提供国に公平かつ衡平に配分されなければならないとの規定がなされました。この15条の具体的な履行についての国際的枠組みを議定書という形で規定したのが、2010年に開かれたCOP10(第10回生物多様性条約締約国会議)で採択された「名古屋議定書」です。

この議定書が採択されるまでには様々な対立の障壁があり、議論は大変紛糾しました。参加者のみなさまには、この「名古屋議定書」に向けた遺伝資源についての国際ルールの実質的内容の規定を目指し、COP10という議場で交渉を行っていただきます。

論点説明

「名古屋議定書に含まれるべき実質的内容の検討」という大論点のもとで、以下の4つの論点を議論していただきます。

1. 今議定書において、対象とする遺伝資源とはどのようなものか。

論点1では、利益配分がなされるべき遺伝資源とは何を指すのかについて話し合って頂きます。例えば、議定書発効以前に取得した遺伝資源は対象になるべきなのでしょうか? 病原体も遺伝資源なのでしょうか? アクセスと利益配分の議論の前提となる論点ですので、担当国の状況に合わせて主張を組み上げて頂きたいと思います。

2. 公平・公正な利益配分の仕組みはどのような形であるべきか。

論点2では、利益配分の具体的な仕組み作りについて話し合って頂きます。生物多様性条約では、遺伝資源の利用は資源保有国の同意と契約の下でなされるべきであることが定められていますが、その具体的な方法は示されていません。担当国にとってどのような仕組みが最もふさわしいのかについて、考えて頂きたいと思います。

3. 遺伝資源へのアクセスの仕組みはどのような形であるべきか。

利益配分を求める遺伝資源保有国に対し、遺伝資源の取得を容易にしていく仕組みが必要であるという主張が、遺伝資源利用国からなされています。遺伝資源保有国、利用国がともに経済的な利益を得ることが出来るような仕組みはどのようなものなのか? 論点3ではこのようなことを話し合って頂きます。

4. 2,3で定められた内容をどのように担保するか。

論点2,3では仕組みについて話し合って頂きました。論点4では、これらの仕組みを確実に実行するための手段について話し合って頂きます。例えば、不正利用を防止するためにはどのような国際制度が必要となるでしょうか? もし発覚した場合、どのように罰することが可能でしょうか? 論点1~3で話した内容を効果的に運用するための手段について話し合って頂きます。

なお、この会議の論点は多岐に渡っています。しかし、最終的に採択される文書は一つであり、コンセンサスでなければなりません。ペアデリを生かして、いかに効率よく自国の主張を最終文書に反映させていくか、このような戦略をじっくり考えて欲しいと思います。

フロント紹介

ディレク自己紹介

【安良城】
東京外国語大学国際社会学部4年の安良城桃子です。
大学での専攻は、ポルトガル語及びブラジル地域研究で、大学3年次に1年間ブラジル南部に留学していました。趣味は旅行で、将来の夢は南米一周旅行です。
【木村】
一橋大学法学部4年の木村良介です。
大学での専攻は国際商取引法で、大学3年から4年にかけてフランスのパリに留学をしていました。横浜住みですが、熱烈なジャイアンツファンです!

ディレクにとっての模擬国連とは

模擬国連を始めたきっかけ
【安良城】高校のときのサマースクールで、少しだけかじったのがきっかけです。国際問題について興味を抱いた際に、集団で学ぶ模擬国連では他人の意見に触れることができる上、個人でなく国家という立場から思考を試みることから、多角的な視点を養えるのではと思い、活動を始めました。
【木村】大学の研究会で魅力的な先輩に誘われたことがきっかけです。ゲームをしながら勉強させて頂く感じが楽しくて、活動を始めました。

印象に残っている会議
【安良城】自分の所属している研究会での「人権と文化多様性」という会議です。最初は議題を全然理解できなくて辛かったのですが、段々と自分なりの考えをまとめることができ、それを議場に反映させるプロセスがとにかく楽しかったという記憶があります。
【木村】2年前に参加した全日本大会のG20はとても印象的でした。一つの成果文書の作成の為に、議論を深め、妥協と協力を繰り返した過程が刺激的で楽しかった記憶があります。

悔しかったこと
【安良城】他の大使から受けた指摘や質問になんにも答えられなかった時が一番悔しかったです。おかげで、会議活動に対するモチベーションが一気に高まりました。
【木村】自分の力不足で会議を楽しみ切れなかった新メン時代は常に悔しかったです。今会議ではそういう方々に参加して頂いて、楽しんで帰って頂きたいです!

その他模擬国連について語りたいこと
【安良城】ゲームであり学びであるという二面性を持った活動は中々ないと思います。模擬国連を「頭脳のスポーツ」と呼んでいた人がいましたが、会議中の参加者の熱気はまさしく「試合」中のようで、そんな緊張感に刺激を受けています。模擬国連をやってみてよかったなと思う点は色々とありますが、続けている理由は、参加者が熱中して一つの問題に取り組むという会議の「非日常感」の面白みなのかもしれません。
【木村】なにか目的を見つけて参加すると楽しいのではないかなーと思います。どの会議が良いか迷われている方は、まず自分の中で目標設定してみると良いのではないでしょうか?ご相談があればいつでも相談のります(笑)

フロントからひとこと

【議長】久慈茂(東京大学経済学部 4年)
みなさんは、議論の面白さを感じたことはありますか。
心から楽しく交渉できた会議はありますか。
この会議では、そんな純粋な「交渉することの楽しさ」を、皆さんと一緒に体感したいと思います。決して綺麗な形ではなくても、積極的に意見を投げかけ、主張を受け止め、説得し、妥協点を探る。皆さんのそのような姿勢を、私たちは全力でサポートします。
交渉することの楽しさ、模擬国連することの楽しさを、年末の東京・池袋で、私たちと一緒に見つけてみませんか。
みなさんの参加をお待ちしています。

【議長】一柳優美香(早稲田大学政治経済学部 3年)
あなたは、模擬国連の活動を、会議を楽しんでいますか?
模擬国連会議をゲームのように楽しんでいる人、模擬国連で出会う人々に魅了されている人もいれば、もやもやとした気持ちを抱いている人もいるでしょう。
会議をすることが楽しくて、だからこそ頑張れた会議はきっとあなたを大きく成長させてくれます。模擬国連を楽しみながら成長したいあなたを、私たちは全力で応援します!!

【秘書官】鈴木泰造(中央大学法学部 4年)
最高の4日間にできるようがんばります!

【秘書官】長谷川賀子(立命館大学法学部 2年)
挑戦してみたいという気持ちはあるけれど、不安があってなかなか会議を楽しめない・・・・・・。そんな気持ちを抱いている人もいるのではないでしょうか。けれど大丈夫です!模擬国連の会議の頑張り方、楽しみ方は一つではありません。この会議で純粋に交渉を楽しむ中で、今までぼやけていた課題を解決するヒントに出会えたり、新たな自分の武器を発見したり、そしてなによりたくさんの模擬国連の「楽しい」を見つけられると思います。
今年の最後、私たちと一緒に「楽しい」を探して、素敵な思い出をつくりませんか? 皆様の参加をお待ちしています。

ディレクから参加者へのメッセージ

まず、議題の分野への不慣れさに不安を感じる方がもしいらっしゃったら、「大丈夫ですよ!」と一言添えさせていただきたいです。ディレクの安良城自身、開発や「利益」といった分野にほとんど接点はありませんでしたが、そういう方でもきちんと会議準備に取り組んでいただける議題ですので、ご安心下さい。

「真剣に向き合って、めいっぱい楽しむ!」
これが、私たちがこの会議で参加者のみなさまと一緒に成し遂げたいことです。
模擬国連を通して何を得たいのか、それはきっと参加者ごとに異なると思います。しかし、それらは全て、目の前の会議に真剣に向き合うことができたときに後から結果として着いてくるものだと私たちは考えます。議場で目的を達成するため一生懸命になったとき、感じるのは楽しさばかりではないかもしれません。会議を経験したことがある方は、しんどさや悔しさも知っていると思います。それでも、そんな中でこそ出会える楽しさもあると信じています。

会議が「好き」な方も「嫌い」な方も関係ありません。
会議を楽しみたい方。私たちと一緒に会議をつくりましょう!

大会企画

概要

大会企画は3日目の会議終了後と4日目の午前中に行われ、前半と後半に分かれています。

前半では、会議についての疑問点を残さないことを目標としています。そのために、会議で普段行われるような単なる振り返りにとどまらない、より充実した形でのレビューを行います。具体的には、自分の会議中の行動についてペアと納得いくまで意見交換し、会議結果にとことん向き合ってもらいます。また、今会議で重視している「交渉」の延長線上のものとして、他の大使とじっくり「対話」する時間も大会企画では多く設けているので、会議中に他の大使に対して抱いた疑問についても納得いくまで突き詰めることができます。

後半では、決議やそれが自国に与える影響を客観視し、さらにそれをアウトプットすることを目的としています。この時間では、各国1分程度のニュースを作成してもらい 、それを実際に撮影します。撮影したものは後日、会議参加者への共有を予定しています。

狙い

会議を全力で楽しんだ後、それをきっぱりと完結させることがこの大会企画の狙いです。レビューでは大使としての行動と、会議の結果である決議を振り返ってもらいます。他の大使の会議行動についての質問と対話を通して、会議についての疑問点は全て解消できることと思います。

後半のニュース作成では、レビューで振り返ったことを整理しアウトプットする絶好の機会になり、また映像という形に残るので会議の大切な思い出にもなることでしょう。会議と同様に、この大会企画も楽しんでいただけると幸いです。

国選びのポイント

ABS

従来、遺伝資源は人類の共通財産であり、国境を越えて自由にアクセスできるものとして認識されてきました。しかし、技術力のある先進国が他国の遺伝資源を開発し利益をあげる一方で、その利益が資源提供国へ還元されないことに対する反発が起き、資源提供側の新興国・途上国が「遺伝資源への国家主権」を主張するようになりました。このことが今回の議題の発端に当たります。

この会議では「遺伝資源へのアクセスを確保し、効率的に利用したい先進国」と「遺伝資源への国家主権を重視し、資源提供国に対する利益配分を確保したい新興国・途上国」の意見の対立があると言えます。この対立を越えて「遺伝資源を今後どのようなレジームの中で利用していくか」について、きちんと国際社会の合意を形成することが今回参加者に課せられる責務です。

そのため、新興国・途上国のグループであるLMMC(Like-Minded Megadiversity Countries)諸国は、自国の資源・利益を守るために政策提案を積極的に行い、それに対して議場全体から理解を得るための交渉をする必要があります。個々の多様なアイディアを持ち寄りつつグループとして協力して、どうすれば国益・グループ益を最大限達成できるのか追求したい方にオススメです。特に、ブラジルは大きな影響力を持つグループをまとめあげる経験をしたい方に向いている国です。

一方先進諸国は、自国の利益が最大限残されるようなレジーム構築のため、効果的な代替案やロジックを用いて交渉を行う必要があります。不利な提案をかわしつつ合意を形成し、きちんと自分の国益を守りきる経験をしたい方にオススメです。その中でもノルウェー・スイスは、議場の歩み寄りを促し全体をまとめたい方に合っていると思います。また、アメリカは遺伝資源開発に大きな利益を持つ国のひとつであり、生物多様性条約非加盟国であるためにオブザーバーとして参加する国です。そのため、投票権を持たないながらもその国際社会での影響力を活かし、不利益な合意形成がなされないよう働きかける必要があります。多少不利な立場でも、堂々とした態度と隙のない論理で相手を説得し、効果的に議場に意見を反映させる経験をしたい方にお勧めする国です。

最後に、この会議がコンセンサス方式であること、数日後に控えた議定書採択に向け、この会議で議定書の方針について合意形成することが全ての国の責務であることから、議場全ての国に「譲れないラインを守りつつ、対立を乗り越えて議場としての結果を出す姿勢」が求められます。このことを踏まえて、自分に合った国を選んでほしいです。