2024年度 講師派遣事業⑧

2024年度 講師派遣事業鳥取県立米子東高等学校

場所:鳥取県立米子東高等学校
日程:2024年10月16日(水)13:00-15:30
議題:国連カフェ
講師:水越萌巴
参加者: 高校生18名

【概要】
★講義(13:00~13:30)
・国際連合とは?
・模擬国連とは?
・模擬国連の流れ
・国連カフェの概要、解説

★各国リサーチ(13:30-14:25)
 自国の主張により説得力をもたせるため、各国の生産量やその食材の栄養素、育てやすさなど様々な観点から調べている人が多かった印象を受けました。
 また、それらのデータを活用しながら、協力できそうな国を把握できていたのも良い点でした。
 さらに、多くの国が事前リサーチの段階で妥協点まで設定できていたことで、対話に対して前向きな姿勢が見られたほか、コンセンサス(全会一致)に向けた動きが加速していたように思います。

★体験プログラム(14:00~15:45)
・参加国(14か国)ブラジル、インド、コロンビア、エチオピア、日本、メキシコ、イラン、タイ、アメリカ、中国、イギリス、イタリア、フランス、ケニア

・議題 国連カフェ
 国連がカフェを開くことになり、そこで提供するフードメニューを3つ、ドリンクメニューを2つ決定するために国連で会合が開かれた、という架空の設定になります。先進国と途上国の対立、経済的、社会的、宗教的観点の考慮など様々な要素を踏まえながら、14か国で合意できるようなメニューを決定していただく内容になっています。

・スピーチ(14:30-15:00)
 自国がどのように国連カフェのメニューにおいて貢献できるかを主張したり、今会議に協力していきたい、しっかりと議論していきたいことを強調するなど、国際社会への貢献や協調の姿勢を見せていた大使が多くいました。また、SDGsに言及するなど、国際会議における重要性を鑑みたスピーチをしてくれた大使もいました。
さらに、「皆さん〜だと思いませんか?」などのように、聞いている側に訴えかけるようなスピーチも見られました。
 このように、各大使がそれぞれ説得力を得るために考えた個性あふれるスピーチを用意できていたのはとても良かったと思います。なおこの点については、スピーチの原稿を用意してもらう前に、実際の国際連合で行われた個性あふれるスピーチの映像を見てもらったことで、よりイメージが沸いたのではないかと感じています。

・交渉(15:00-15:35 )
 全体的に、2つのグループに分かれて交渉が行われ、度々2つのグループ合同での交渉が行われていました。以下、2つのグループを①②で示します。

★ドリンクメニュー
① コーヒー派閥と紅茶派閥に大きく分かれる。→どちらかに絞ってしまうともう片方の派閥が合意できないことと、ドリンクメニューを2つ選ぶことができることから、ドリンクメニューはコーヒーと紅茶で合意。
② 多くの国の名産の果物を入れることができるため、パフェとミックスジュースのどちらもメニューにいれることで合意。
➡全体で一旦話し合い、①が「ミックスジュースを入れる代わりにパフェで妥協できないか?」と②に交渉。②がこの提案を受け入れ、ドリンクメニューはコーヒーと紅茶の2つ、フードのうち1つはパフェで合意。

★フードメニュー
① 牛肉や豚肉は宗教によっては食べることができないが、フードメニューを3つ選ぶことができることから、肉を使用したメニューを採用してもいいのではないか、という話になる
→①と合意できる可能性を考え、アメリカなどは牛肉の使用にこだわらず、肉メニューが1つでも入れば良いと妥協した結果、肉メニューには宗教上の問題がない鶏肉を使用する方向で合意。親子丼とピザでまとまる
② 途上国に配慮して、とうもろこしや米、じゃがいもを使用するメニューを重視し、カレーライスを入れる方針を固める。お肉の入ったメニューは入れない方向でまとまる。
➡①が②の入れたいと主張したとうもろこし、じゃがいもの重要性を疑問視。交渉の末、米は親子丼で代用できることや、お肉メニューがないと先進国側が厳しいこと、その代わりに鶏肉で途上国にも配慮していること、世界的に生産量が多い卵が使われることなどから、ピザと親子丼で合意。
全体的に合意ラインを広く定め、「最低限これが入れば大丈夫」という姿勢を全員が持っていたことから、そこまで意見が対立せずに合意することができていた印象です。多くの国で合意を形成することの難しさから、すべての国が他国の状況を理解し、代替案を出している様子を見て、有意義な話し合いが行われているなと感じました。最終的にブラジルから提出された案も、どこか一カ国が得をするようなものではなく、すべての国にとって嬉しいメニューや食材が使われており、良い決議案になったと思います。このことは、決議案のスポンサーとして10か国が名を連ねたことからも分かります。

・投票(15:35~15:45)
 投票は一カ国ごとに投票行動を決めるロールコール方式で行われましたが、すべての国がYesを挙げたことから、コンセンサス(全会一致)で可決されました。

★講評(15:45~15:55)

【講師からのコメント】
 今回は、全体を通して「対話」が重視されていたように思います。ただ意見を対立させ、自国の意見を通そうとするのではなく、自国にとっての理想は存在する一方、現実的なラインを見定め妥協ラインをあらかじめ設定し、合意できるラインを模索するという交渉の仕方をしていた大使が多く存在した結果、どの国にとっても嬉しい最終文言が完成したことはとても素晴らしいなと感じました。
 更に、今回印象的だったのが、事前準備の精度がとても高かったことです。ただ自国のスタンスを調べ、そこから交渉方法を考えるのではなく、より説得力をもたせるために様々な観点から自国/他国の農業、宗教などを分析し、多角的な視点を持って交渉に臨んでいた国が多くいました。国益は複雑で単一の視点だけでは語れないことから、事前準備においてこのような方法でリサーチをしていたことはとても良かったと思います。

 さて、模擬国連の活動は現在全国の高校で行われているものの、どうしても都市部の高校と地方部の高校では環境に差が生じてしまいます。都市部の高校であれば他校と合同で模擬国連会議を開催したり、より模擬国連活動が盛んにおこなわれていますが、地方部の高校ではそのようにはいきません。しかし今回3,4校合同で模擬国連体験会議を開催できたこと、多くの方に関心を持っていただいたことは、地方高校における模擬国連の活性化が期待できると感じました。実際、講義が終わった後に何人かの生徒さんから模擬国連活動における質問を多くいただきました。模擬国連に非常に関心を持っていることや、校内にもっと模擬国連を広めたいという思いを目の当たりにし、今後も中国地方における模擬国連活動の普及をお手伝いさせていただきたいと強く感じました。
このような機会を設けてくださった教職員の皆様、参加してくださった生徒の皆さん、誠にありがとうございました。

(水越)

【参加者からのコメント】
・自国の利益と他国の利益のどちらも叶えるためにはどうすればいいのかを考えるのが難しかったです。自分の担当する国の背景について考えるのが楽しかったです。(Aさん)

・国連の形式が学べて、議題決定への流れがわかった。また、互いの最大限の利益をみんなで話し合って追求することができたのが、楽しかった。(Bさん)

・初めての模擬国連で難しいことが多かったけれど、先輩やうまい人のスピーチをきいて、話すうえで重要なポイントなどを知ることができたので良かった。自国の利益を優先するけれど、他の国にもメリットがあるように考えるのも良い経験になった。(Cさん)

講師派遣事業に関するお問い合わせ・ご相談
→日本模擬国連 事業担当:project.jmun @gmail.com

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