【会議設定】
会議監督(名前/大学/学年/研究会) | 戸髙浩太郎/法政大学/3年/四ツ谷研究会 |
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議題(英語) | NPT再検討会議/2015 Review Conference of Parties to the Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons |
議題(英語)、設定年 | Conference of Parties to the Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons(2015) |
【会議監督挨拶】
今年、米国が過去にない核政策の転換を図っています。オバマ大統領の広島訪問、核兵器先制不使用の宣言の検討、加えて国連における核実験禁止決議の採択を目指すという報道もあります。きっと模擬国連に関わるみなさんならこれらの持つ意味が分かると思います。 NPTというレジームは非常に保守的です。すなわち、各国の立場が明確かつ変わりにくく、核軍縮への歴史的な動きや進展は数十年単位でしか起こっていない。だからこそ、模擬する際には、根拠がなく連続性から外れる迂闊な行動は目立ちます。史実よりも模擬国連を重視するような会議行動はすぐに咎められます。 この会議で無敵の模擬国連能力や万能な知識を身に付けるのは難しいかもしれません。だからこそ参加者の皆様には、この会議をこれまでの自分の模擬国連への関わり方を振り返る機会にしてほしいと思います。同時に、これからの模擬国連への関わり方や国際問題を考える視座を提供したいと考えています。そのために適するNPTで会議を作ります。この会議に一人でも多くの人が興味を持ってくれることを期待しています。 |
【会議テーマ】
「模擬国連をするために何をするかではなく、国連を模擬するためにどうすべきか考える」 なぜ私が全日本大会で会議をつくろうと思ったか。「模擬国連」でありながら模擬する対象が国連ではなくなっている部分があるように思います。 模擬国連会議では、例えば途上国援助を議論する際に、ときより自国の国家予算の3分の1くらいを援助額として提示 してしまう国があります。そんな約束をしてしまえば国に帰ったら外交官はすべからく罷免ですね。議論した内容のみを決議案として出すべきだと主張する国もあります。でもどうでしょう。実際の国連では全体議論されず、限られた国の中でしか共有されていない内容がいきなり採択に付されることが多い。もちろん議論できなかった国の反発はありますが、決着は投票でつけます。レビューでは「プレゼンス」とか「国益達成」という言葉が聞かれます。でも発言量やマスター国を務めたという事実自体を国益にできるのは模擬国連だからです。 このように「模擬国連をするためにどうするか」ではなく、模擬国連会議で参加者が「国連」を「模擬」する会議をしたい。私が会議をつくった根本的なきっかけはこれに尽きます。会議での参加者の行動は担当国と議場の性質あってのものです。本当はそこにこそわざわざ「国連」という場を使う意味があると私は考えています。 |
【本会議を通じた参加者への「問い」】
「核廃絶は平和をもたらすか、破壊するか」 核兵器を減らし究極的になくすことは世界平和につながる。無論この目標は持ち続けなければなりません。しかし、核兵器は「必要悪」であるという考え方もできます。核によって不毛な争いが避けられるというものです。冷戦期に米国とソ連が通常兵器では一度も戦火を交えなかったことを根拠とします。核の現実的な意味を考えてほしいと思っています。 |
【求める参加者】
「国連」の模擬に集中する人 国の国際的立場と政策をより現実的に模擬することに挑戦したい人 実質的な議論をしたい人 当会議では手続き事項に関する議論をできるだけ省略します 模擬国連会議に参加する目的を考えたい人 会議後、フロントや参加者どうしで模擬国連をする目的について話したくなる会議です。 |
【議題解説】
核兵器の不拡散に関する条約は、もともと五大国だけが核兵器を持てるようにするための条約でした。非核兵器国にとっては不平等条約そのものでしたが、転機は冷戦の終了でした。それまで米ソの核戦争を防ぐための唯一の国際法として機能してきたNPTは、普遍的な核軍縮と新たな核拡散を防ぐという目的を新たに負ったのです。 この頃の世界では、例えばある地域の対立する2つの国がお互いに核開発を行ったり、それまでNPTを守っていた国が原子力発電技術を核兵器製造に転用したりしました。最近では非国家主体に核兵器が渡るという脅威に晒されています。彼らには基本的な安全保障の理論が通用しません。 そんなことから、締約国が集まってこれらの問題に対処するための会議を開く必要性が出てきました。冷戦期には想定もされなかった役割がNPT再検討会議に付与されたのです。 5年毎に開かれる再検討会議では、核問題について各国が真正面から向き合います。議論の紛糾や各国のなじり合いもありますが、確かに核軍縮に向けて前進しようと各国が力を注いでいます。核なき世界への道はまだまだ遠いですが、NPT以外に核兵器についての国際的な約束はありません。国際情勢が不透明な今、その重要性が高まっています。 |
【論点解説】
① 核軍縮と核不拡散 現在地球上には2万発を超える核兵器があるとされています。これらを減らすためには大量に保有する国が協力して少しずつ減らすしかありません。その具体的方法について議論します。また五大国以外に核は広がりました。いまでは非国家主体が核を持つ現実的な脅威に晒されています。このような拡散を防ぐ方法を議論します。 ② 核の平和利用 核は原子力発電という形で人間の生活を豊かにしました。しかしこれは最後の形が異なるだけで核開発とほとんど同じ行為です。平和に利用するのは各国がルールを守っているからですが、そのルールを守り通すための方法や、守らない国に対してどう対応するのか議論します。 |
【フロント紹介】
会議監督/戸髙浩太郎/法政大学/3年/四ツ谷研究会 副会議監督/久保田大輝/法政大学/3年/四ツ谷研究会 副会議監督/小澤大我/早稲田大学/3年/早稲田研究会 事務官/長谷川賀子/立命館大学/3年/京都研究会 事務官/小沼詩帆/上智大学/3年/四ツ谷研究会 事務官/宮内楓子/早稲田大学/2年/早稲田研究会 |
【国割】
Australia | Austria | Belarus |
Brazil | Canada | Chile |
China | Costa Rica | Cuba |
Egypt | Finland | France |
Germany | Indonesia | Iran |
Ireland | Israel (Observer) | Japan |
Malaysia | Marshall | Mexico |
Myanmar | Netherlands | New Zealand |
Nigeria | Norway | Poland |
Russian Federation | Saudi Arabia | South Africa |
Sweden | Switzerland | Turkey |
Ukraine | United Arab Emirates | United Kingdom |
United States | International Atomic Energy Agency (Observer) |
【国割選びのポイント】
※グルーピングの名称はNPT再検討会議に合わせました。国際政治学上の分類と異なる場合があります。また、一部省略しています。
【会議での主要なグループ】
*核兵器国と非核兵器国
法的な国の枠組みはこの2つのみです(重要)。核兵器国は保有する核兵器を他の国に拡散しないという義務と、保有する核兵器を縮小していく核軍縮義務を負っています。うちロシアと中国は他のグルーピングとあまり協力せず独自のスタンスをとっています。
• 西側同盟国と東側同盟国
NPTが冷戦期の核拡散抑止という目的があったことから、西側と東側で基本的なグルーピングがあります。ただし冷戦の終了によって旧東側の国が西側の安全保障体制に組み入れられたことによって、ロシアと同盟関係にある「東側」と明確にいえる国はなくなりました。西側諸国の数が多くなっています。このグループ分けで会議中の議論が左右されることはあまりありません。
• 非同盟諸国(NAM)
東西冷戦時に非同盟で団結した諸国の流れをくむものです。インドがその筆頭ですが、NPT締約国ではありません。アジアではインドネシアやマレーシアが中心となっています。またラテンアメリカのミドルパワーとしてメキシコやブラジルがあります。この国々は現在でも決議案の共同提出や議論での連携をとっています。
• 新アジェンダ連合(NAC)
核兵器国と、核保有国に核兵器の削減を促すための政治グループです。NPTが無期限延長された直後に結成され、再検討会議における現在の議論は新アジェンダ連合によって形作られたとも言えます。核兵器国と非核兵器国の原則的な対立に終始するのではなく、核廃絶に向けて核兵器国から明確な約束を確実にとっていく「新アジェンダ」を確立したグループです。
• 軍縮・不拡散イニシアチブ(NPDI)
2010年に結成したグループです。2015年の再検討会議がグループとして初めての会議でした。NPTにおいてそれまで政治的グループに属さなかった日本やオーストラリアが他の国を巻き込んで政治的に力を持つために結成したものです。背景には新アジェンダ連合の影響力が確かなものになり、NPT体制において単独ではなく政治的グループで動く必要が出てきたことがあります。