第11弾 世界知的所有権機関(WIPO)日本事務所 マリア・デ・イカサ所長インタビュー
今回は、2009年度GMUN日本代表派遣プログラムメンバーの小幡奈々江が、世界知的所有権期間(WIPO)の日本事務所のマリア・デ・イカサ所長にインタビューしてきました。
目次
- 前半:WIPOについて/他機関との協力
- 後半:国連機関で働こうと思ったきっかけ/事務局長のお仕事/日本人学生へのアドバイス
●WIPOのミッションは、バランスが取れていてアクセスのしやすい国際知的財産体制を開発することですが、WIPOはこの任務をどのように遂行していますか?
WIPOは加盟国主導の国際機関で、現在では184カ国が加盟しています。つまり、世界の国々の90%以上がWIPOの加盟国だということになります。加盟国は、年次総会、会合やワーキンググループに参加し、WIPOとその活動の方向性を決めます。
WIPOの事務局はジュネーブにあり、90カ国以上から募られた職員によって運営されています。職員は加盟国の会議の調整を行い、そこで決められた事項を遂行する責任を担っています。
2年に1度、WIPOの事務局は加盟国に”Program and Budget Document”という文書を提出します。その文書には、今後2年間のWIPOの明確な目標と活動内容、そしてその実行に必要な予算が記載されており、加盟国による承認を要します。
知的財産 (Intellectual Property: IP) 法と基準を発展させることは、私たちの活動の1つです。私たちは、特許、商標(マーク)、工業意匠(デザイン)、著作権、地理的表示などの知的財産に関連した24の国際条約を管理しています。
また、WIPOはグローバルな知的財産保護サービスの実現に向けた活動も行っています。WIPOは3つの登録システム(特許の国際登録に関するPatent Cooperation Treaty (PCT)システム、商標の国際登録に関するマドリッドシステム、工業意匠の国際登録に関するヘーグシステム)を管理しています。
これらのシステムを通じて、発明、ブランド名やデザインを国際的に保護したい企業や個人は、国際的に統一された1つの出願願書を提出し、所定費用を支払うことにより、目的の保護を指定国において円滑に求めることができます。
さらに私たちは、知的財産を経済発展に活用することを推進しています。知的財産は経済開発においてとても重要な要素となります。なぜなら、知的財産は、技術革新や創造力を育成するインセンティブになり、また技術移転をより円滑に進めることを可能にするからです。
現代の経済やビジネスでは、目に見える商品そのものよりも、無形の資産により一層の価値が置かれてきています。知的財産の重要性はさらに増しているのです。
●WIPOは、国連や各国政府とどのように連携をとっていますか?
私たちは加盟国主導の機関なので、私たちの活動のほとんどは加盟国政府からの要請に応えるものです。国連とは多くの会議を行い、時には合同プロジェクトや研究を実施します。また共通の関心事項に関しては、頻繁に協議を行います。
最近WIPOには、Global Issues Sectorという新部門が設置され、その部門では知的財産がどのようにヘルスケア、環境、食料の安全保障に関連しているかといった課題に取り組んでいます。そのため、WHO、FAO、UNEPなどの機関と連携をとる必要があります。さらに、貿易の分野においても知的財産はとても重要な事項であるため、私たちはWTOとも強い繋がりを持っています。
●NGOとは協力していますか?
はい。私たちは、219の国際的、51の国内的NGOを、WIPOのオブザーバーとして認定しています。認定されたNGOは、WIPOの会議に参加することができ、情報提供することもできます。NGOは投票することはできませんが、政策立案者の考えに影響を与えたり、それぞれの専門分野に関して情報を提供することができます。
さらに、WIPOは他の国際機関やNGOと共に、開発事業を実施するための支援に貢献しています。2007年にWIPOの加盟国は、WIPOの全活動に開発という要素を強化するための一連の提案を記載した「開発アジェンダ」を採択しました。このように、私たちは、他の国際機関やNGOとの協力を強化しながら、開発目標を実現しようとしています。
●日本政府は、知的財産保護を推進するために、どのようにWIPOを支えてきましたか?
日本政府はWIPOの同盟の多くに加盟しています。そのため、日本は、そうした同盟を通して、実質的にWIPOの活動方針の決定に参画・貢献しているのです。
また1987年より日本は、WIPOの開発協力プログラムに任意拠出金を寄与してくださっています。この拠出金を通して、様々な研修プログラム、会議、専門家派遣、フェローシップなど、発展途上国に知的財産の重要性を伝え、知的財産の恩恵を受けるのに必要な体制の構築を図るための支援活動が行われています。
●日本事務所があるのは、そのためですか?
私たちは、知的財産がもたらす経済的影響について、アジア太平洋地域の研究を行ったり、知的財産の重要性を伝えるためのアウトリーチ活動などを行っています。
後半:国連機関で働こうと思ったきっかけ/事務局長のお仕事/日本人学生へのアドバイス
●国連機関で働こうと思ったきっかけは何ですか? WIPOで働く前のキャリアについて教えていただけますか?
私は小さい頃に、母国を離れて海外で暮らす機会があったので、その頃から自分がいつかは国際的な環境で働いている姿を想像していました。学生の頃に、いくつか大手多国籍企業でインターンをしたのですが、その経験を経て、国際ビジネス業界は私に向いていないと確信しました。
私は、単に一企業の利益のために働くのではなくて、社会に何かを還元したいと強く感じました。それを実現するためには、国際的な公的部門を目指す必要がありました。私はメキシコ人なので、メキシコの外務省で働くことも考えましたが、幼年時代に転居ばかりしていたので、一箇所に定住してそこにしっかり根を張りたいと考えました。そのため、国際機関で働くことにしたのですが、実際には一箇所に留まっていません。
私のキャリアはワシントンD.C.において、米州機構 (Organization of American States)という、南北アメリカのための地域的機関で働くことから始まりました。数年後ジュネーブに移り、WIPOの本部にて勤務してきました。そして、ちょうど1年前にWIPOの日本事務所に着任したのです。
私の一箇所で落ち着きたいという願いは国際機関で働くことでは叶いませんでしたが、私のように転居を重ねている背景を持つと、何年も長く同じ国に住み続けていると、また移りたくなるものです。
●WIPO日本事務所所長としてどのようなお仕事をされているのですか?
WIPOの日本事務所はとても小さな事務所で、業務は数多くある一方、人手がとても少ないのが現状です。そのため、私の仕事は日々異なります。メール、電話または会議により、アウトリーチや研究プロジェクトの調整に徹している日もあれば、所長として、WIPOを代表して様々なイベント、シンポジウム、レセプションなどに出席する日もあります。
さらに、研究や執筆活動を行う場合もあるのです。今年は、私たちのアウトリーチ活動の一環として、日本の発明家、デザイナー、商標オーナーや起業家を取り上げたドキュメンタリーを制作します。この制作に関わることによって、さらに新たな仕事が増える予定です。このように、私の業務は、日々異なるのです。
●このようなお仕事は、本部の指令によって実施されるのですか?それとも所長が主導で行っているのですか?
業務計画は私が提案していますが、もちろん本部の了承は必要です。本部との調整は行われますが、自立度は高いと言えるでしょう。
●日本には国際機関で働くことを目指している学生が多くいます。所長の経験から、その学生たちにアドバイスを頂けますか?
語学の習得は本当に大事だと思います。英語もしくはフランス語で円滑に書面でも口頭でもコミュニケーションを取れる必要があります。そして、さらにもう一つ、国連公用語を使いこなす能力があればさらにいいと思います。
もう一つ重要なことは、国際機関や政府機関でインターンなどを通じてなんらかの実務経験をすることだと思います。外務省でそうした経験を積むことは非常にいいと思いますが、外務省だけでなく、例えば他の省庁においても将来国際機関で働くときに役に立つ専門知識を得ることができると思います。
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GMUN日本代表派遣プログラムは、外務省「いっしょに国連キャンペーン」の協力団体として、メールマガジンのインタビュー作成を担当しています。メールマガジンのバックナンバーはこちらからご覧頂けます。
最終更新:2010年6月22日
