第13弾 国連食糧計画(WFP)日本事務所 モハメッド・サレヒーン代表インタビュー
日本模擬国連の矢田結(東京外国語2年)・伊藤圭亮(東京大学2年)が、国連食糧計画(WFP)日本事務所代表 モハメッド・サレヒーン様にお話を伺いました。
1.WFPはどのようなことをなさっている国際機関でしょうか。
WFPの最も大きな目標は”fight hunger”つまり、飢餓を撲滅していくことです。そのために、国連唯一の食糧支援機関として、食糧支援を実施しています。ご存じだと思いますが、世界の飢餓人口は10億人を超えています。それは、世界の人口の6人に1人が上で苦しんでいることになります。WFPは、民間企業や個人からの募金を使いながら、各国政府と協力し、「食糧」という目に見える形での支援を供給しています。
近年ハイチでおこった地震や、津波といった自然災害は、直に人々の生活を脅かします。そのような緊急時に苦しんでいる人たちの元に、様々なルートを使って食糧を届けること、それもWFPの大事な使命です。
日本事務所に関して言えば、日本政府は「人間の安全保障」に焦点を置いており、その根幹には「食糧の保障」があります。両者には密接な関係があり、それこそが日本にWFPの事務所があり、日本政府と協力している理由でもあるのです。日本はWFPのパキスタンやアフガニスタン、コンゴ民主共和国、コンゴ共和国、イエメン、ウガンダ、などにおける支援活動に対して拠出金を供給しています。
また、WFPは「学校給食プログラム」や「Food for Work Programme」というプログラムにも取り組んでいます。
2.「学校給食プログラム」とは、どのようなプログラムでしょうか?
途上国の学校に栄養価の高い給食を提供するというものです。
現在、6000万人以上の小学生が、学校に行っても食事をとることができません。さらに、7200万人は、学校に通うことすらできないのです。子どもたちの健全な発育を助けると同時に、就学率・出席率を向上するために、このプログラムをスタートしました。学校で無料で給食が出れば、親は積極的に子どもたちを学校に通わせます。WFPは実際今までに、毎年平均で60カ国、2200万人以上の子どもたちに学校給食を届けています。給食のおかげで、空腹が満たされ集中して勉強できるようになり、また、教育は未来の人材育成にもつながります。このように、WFPの給食は世界中の途上国の子どもたちの未来を支えているのです。
3.Food For Work Programmeについても教えていただきたいと思います。
WFPは、食糧支援を、主に災害時や緊急時に絞って行っています。大体3~6カ月くらいのタームが目安です。それは、人々が食糧支援に頼りすぎて、自立を妨げることを防ぐためです。
人々を職業に従事させるため、自立を促すために行っている食糧支援もあります。それが、Food For Work Programmeです。具体的には運河を造ったり、植林といった職業訓練を受けた人に見返りと言う形で食糧を配給する仕組みになっています。このことは、人々に職を与え、自立を促し、社会への貢献にもつながっていくのです。
4.先ほど、「様々なルートで食糧を供給する」とおっしゃっていましたが、WFPはどのようにして適切なところへ食糧を運んで行くのでしょうか?
WFPは、適切な量の食糧を、適切な対象者に、適切な場所、適切な時期に届けることを目指しています。これを達成するために、WFPは、緊急支援物資を輸送するという複雑な仕事を高度な技術に変えました。2009年、WFPは460万トンの食糧を陸、空、海の輸送手段を使って確実に苦しんでいる人々の元に送り届けました。
WFPのロジスティックスの輸送ルートは、砂漠、山脈、海を越え、世界の最も貧しい国々に広く行き渡っています。食糧が目的地に到着したら、WFPの専門家が食糧配布に向けて最後の橋渡しをします。飢餓に苦しむ人々に食糧を届けるため、専門家は港を改修し、道路を修復し、橋を補修し、鉄道を敷き、空港を管理するのです。
WFPが実際に現地で供給している食糧
©WFP/Laura Melo
©WFP/Brian Gray
©WFP/Edward Mabweijano
5.先ほどもおっしゃったように、飢餓人口は年々増え続けて、今は10億人以上にものぼります。どうすればそのことがより知られるようになるでしょうか。
日本は平和で食糧に関してはあまり困っていない国ですから、飢餓状況がどのようなものだか、あまり実感がわかないかもしれません。しかし、食糧支援というものは目に見える形で飢餓で苦しんでいる人々に供給できますので、一人一人の募金が直に苦しんでいる人々の生活を救うのにつながっているということになります。また、近年WFPは広報活動に力を入れています。電車や道などで、WFPのポスターを見た方もいらっしゃるかもしれません。このような形でも、WFPの食糧支援活動を知っていただきたいと思います。
6.各国連機関は各々MDGsのゴールに対して責任があると言われておりますが、WFPはおもにどのターゲットを重視していらっしゃいますか?
WFPの最も主要な目標となるのは、ゴール1の「貧困と飢餓の撲滅」です。これはWFPの目標と合致します。しかし、すべての活動の根幹は「食」にありますので、WFPはすべてのゴールに対して重要な役割を担っています。例えば、ゴール2の普遍的初等教育の達成ですが、これは先ほど説明した「学校給食プログラム」が大きく貢献していると考えます。空腹であれば、勉強には集中できません。食は、教育の根幹でもあるのです。また、ゴール3の女性の地位向上に関しても、女性は家庭の中心的存在で、食糧の安全保障の鍵を握っていることから、重要な役割を果たしていると言えます。ゴール4の乳幼児死亡率の削減に関して、そしてゴール5の妊産婦の健康改善、ゴール6のHIV/AIDSなどの疫病の蔓延防止に関しても、WFPの役割は大きいと言えるでしょう。WFPの支援している食糧として、栄養価の大変高いビスケットや、ペースト状の栄養食品(ビタミンやミネラルが含まれている)などがあげられますが、これらは免疫力をあげるのにも効果的です。また、ゴール7の環境の持続可能性に関しても、Food For Work Programmeの一環として、植林などで間接的に貢献しています。
このような栄養補強に重点を置いた活動は、人々の労働・就学意欲を高め、病気に対する免疫力の向上、ストレス削減、紛争状況の改善、母子の健康状態改善、ひいては基本的人権の保障など、発展を助長する良い結果を生み出すことに繋がるのです。食は、人々の活動に直接影響するということなのです。
7.WFPとFAOの大きな違いは何でしょうか、また、両者はどのように連携しているのでしょうか?
国連の、食糧に関係した機関として、WFP、FAOがあげられます。
WFPとFAOは飢餓撲滅のため2本立てのアプローチを採っています。
WFPの任務は短期的な問題の対応です。飢餓に苦しむ貧しい人々に食糧を配給し、飢餓と貧困のサイクルを断ち切るのを助けます。緊急事態や開発プロジェクトに対する食糧支援という形でグラント(無償資金協力)を供与し、食糧は直接受益者に届けられます。WFPは、先ほど申しましたロジスティックスや携帯電話などを利用して、確実に必要な人に届くような仕組みになっているのです。
FAOは飢餓撲滅のための長期的な国際的な取り組みを展開します。FAOは先進国および開発途上国の双方を対象に、中立的な会合の場となっています。
8.近年、食糧価格高騰が深刻な問題になっておりますが、WFPはなにか影響を受けましたでしょうか?
飢餓の原因は様々ありますが、2007年ごろから始まった燃料価格や食糧価格の高騰を原因として、一億人以上の人々が新たに飢餓に陥りました。これは、WFPの援助活動にも大きく影響しました。
食糧価格の高騰以前は、WFPの活動予算は20~30億ドルでしたが、それが2倍の40~60億ドルに膨れ上がったのです。支援を必要とする人の数も増え、まさに危機的な状況です。
貴重なお話ありがとうございました。




