第2弾 国連大学(UNU) コンラッド・オスターヴァルダー学長インタビュー

国連大学(United Nations University: UNU)オスターヴァルダー学長へのインタビューを担当したGMUNの小幡奈々江(東京大学3年)です。インタビューは国連大学の12階にある学長のオフィスで行われました。今回インタビューさせて頂いたオスターヴァルダー学長は、UNUの方針や目標についてとても熱く語ってくださり、また日本政府とUNUの密接な関係についても詳しく話してくださり、UNUと各国政府の関係の重要性を実感しました。後半ではご自身のキャリアについての質問させて頂いたのですが、専門に研究されている理論物理学と現在のキャリアの関係についてのお話には感動しました。
国連大学は今後、修士・博士号を修得できる大学院の機能を設置する予定です。ぜひ、これから国連で働きたいと思っている人にはUNUへの進学を一つの選択肢として視野に入れて頂きたいです。(小幡)
目次
インタビュー前編:UNUの方針/他の大学との協力/日本政府との関係は?
●現在のUNUの方針を教えて頂けますか? UNUはどの研究分野に最も力を入れているのですか?
UNUではサステナビリティ(持続可能性) に関連したすべての分野の研究を実
施しています。例えば、平和とガバナンスから応用工学、そして感染症、エネ
ルギー、生物多様性や水の管理に関連した科学的リサーチまで幅広い活動が行
われています。すべてとても重要な課題であり、これらの研究を実施するため
に13ヶ所の研究施設が世界中に設けられています。
●UNUと他の大学・大学院との関係は?
我々は、常に世界中のトップの大学と協力し合っています。 将来的にUNUのす
べての研究施設に独自の修士・博士号プログラムを設置する予定なのですが、
それに伴い各国の大学・大学院との協力はさらに強化されていくでしょう。
UNUの施設のみでは規模が小さすぎるので、 他大学との協力がとても重要なの
です。例えば、東京では平和及びサステナビリティについてのプログラムを設
けようとしています。
さらに、大学の中にはUNUの正式な連携施設( Associated Institute)となって
いるところがあります。UNUの連携施設になるためには、 我々の研究分野に関
心を持つこと、そして我々の研究者ネットワークと進んで協力し合える研究者
が動員できることが条件です。共同プロジェクトが成立次第、連携への道も開
かれるのです。
●UNUの特徴は何ですか?
UNUは他の大学機関と異なった、ユニークな側面を持っています。 例を挙げま
すとUNUは国連システムの一員です。 サステナビリティ分野の研究に特に力を
入れているのもそのためです。 国連の一組織であることによって、UNUの学生
は国際社会の実務に最も近い環境に置かれることになります。こうした特徴が
UNUを他の大学にとって魅力的なパートナーにするものと考えます。
我々の長期的目標の一つは、国連機関をリードする職員の 60~70%がUNUの学
位を取得している状況をつくることです。私達の提供するコースやプログラム
はすべてとても国際的なものとなります。例えば、日本にプログラムを設置し
たとしても、50%以上の学生は海外から来ることでしょう。 授業はすべて英語
で行われます。 このようにUNUは世界中にオープンな大学になることを目指し
ているのです。
UNUの学生は、 国連機関や他の国際機関でインターンシップを行う機会にも恵
まれます。そのため国連機関・外交団・市民社会・政府などで直接実務に関わ
っている講師と接する機会も多くあります。
●日本政府はどのように UNUとその研究プロジェクトをサポートしてきました
か?
日本政府の協力なしでは、今のUNUは存在しなかったでしょう。UNUが設立され
た時に、日本政府は多大な支援の約束をしてくださいました。 1億ドルの国連
大学基金への拠出や、運営経費の拠出、そして本部施設の建物の提供も約束し
てくださいました。これらの約束はすべて守られ、実現しています。我々はこ
れから先も日本の政府、国会、そして国民からの継続的な支援と善意を頼りに
しています。
UNUは先進国の施設の「 ツイン・インスティテュート」を開発途上国に設置し
ているので、我々が強力な政府のサポートを得られることはとても心強いこと
です。
政府は我々との繋がりを保つことで、益々多くの日本の若者が国連や NGO等で
のキャリアに向けての準備をすることが可能になります。そうしたことが、UNU
を政府の関心の対象にする大きな理由の一つなっていると思います。
インタビュー後編::国連で働く事と物理学の関係/事務次長のお仕事/若者へのメッセージ
●日本では国連関係者は文科系の経歴をお持ちだというイメージを抱きがちで
すが、オスターヴァルダー学長は理論物理学での素晴らしい経歴をお持ちです
。物理学と学長の現在のキャリアとの間にはどのような関係があるのですか?
物理についての知識は現在のお仕事で生かされていますか?
まず、自然科学者というものは、とても分析的に厳密な論理学の枠組みの中で
考えることを学びます。これは様々な複雑な問題解決には欠かせない基礎的な
スキルだと思います。しかし、自然科学者として常に意識しなければならない
のは、感染症や飢餓などの問題を扱うときには、社会的側面や政治的側面も入
り混じっていて、それに柔軟に対応していかなくてはならないということです。
物理学が達成したもっとも素晴らしいことは、一見なんの関連性もなさそうな
様々な現象を結びつけたことだと思います。最も有名な例を挙げると、
惑星、星や月の動きと地球上の引力の法則です。これらは、
直観としては二つの全く異なった現象です。
しかし、かつての物理学者はこの二つの現象を一つの数式
で説明することに成功したのです。このように全く関連性がないような現象を
一つにまとめたという事例がいくつもあります。こうしたものの考え方、つま
り様々な事例の異なった側面を結びつけようとすることは、私のUNUの仕事にお
いてとても大切な考え方なのです。私のUNUでの仕事は、様々な考え方のもとで
行われる研究を互いに関連づけることです。この「システムズ・シンキング」
と呼ばれる考え方こそが、私が理論物理学から学んだものなのです。
●オスターヴァルダー学長はUNU学長と国連事務次長という二つの肩書きをお持
ちですが、日々どのようなお仕事をされているのですか?
UNUの学長に就任してから最初の一年の間に私はUNUの新しい戦略を策定しまし
た。例えば、UNUを修士・博士号が取得可能な真の大学院に転換していくことは
重要な活動の1つです。それに加え、我々の憲章にも掲げられているとおり、
途上国における能力開発(キャパシティー・ビルディング)への関わりを強化
していきたいと考えています。さらに、UNUの全ての研究・研修施設をツイン・
パートナー化し、途上国における研究・研修施設がそれぞれ先進国の研究・研
修施設とパートナーを組み、共同研究を行える環境を整える方針も計画に含ま
れています。
UNUが高いレベルの自治を保てるように、学長であると同時に私は国連事務次長
でもあります。UNUは直接事務総長に報告する学長を通してのみ国連と繋がって
います。国連事務次長というポストは、事務総長に次ぐランクのポストなので、
国連の他の下部機関に報告せずに、直接事務総長と連絡を取り合うことができま
す。さらに、国連事務次長は、国連の各機関の代表が出席する事務総長のハイレ
ベル会合に出席することができます。これはとても重要なことで、私はこの会合
に出席することで国連の他の機関の現状を把握することができます。私はこの会
合で得た情報をもとに、他の機関との協力を推進し、相乗効果を生み出すことが
可能になり、さらに言えば、UNUは最も高いレベルでの国連にアクセスがあるこ
とになるのです。
私のもう一つの重要な役割は、我々をホストしている国の政府やその国民との間
に強い協力関係を築くことです。私は日本、そしてアジアにおいて最もランクが
上の国連職員なので、UNUの学長としての役割を超えた事柄にも対応することが
可能なのです。
●オスターヴァルダー学長がUNUの学長に就任してから実施された、最も思い出
深いプロジェクトは何でしたか?
私がUNUの学長に就任してから行われた一番思い出深いプロジェクトは、2008年
日本で開催された第四回アフリカ開発会議(TICAD IV)とG8サミットの機会に実
現した日本政府とのとても実りあるコラボレーションです。
●日本には、国際機関で働くことを目指すたくさんの若い学生がいます。そのよ
うな学生に、国連というフィールドで働くにあたって、どのような心構えや準備
を進めたら良いか、アドバイスを頂けますか。
もし、あなたが私にこの質問を来年していたなら、ぜひUNUの大学院に進学するこ
とをお勧めしました。それが私の提供できるベストなアドバイスです。現時点で
も学生としてできる実用的なことはたくさんあります。例えば、インターンとし
てUNUをはじめとする国連機関で働くことができます。我々は多くのインターン
シップを提供しています。
私は国際関係を勉強する学生に国連とその他の多国間システムについてもっと勉
強することをおすすめします。また、英語や他の言語を習得することは将来国際
的なキャリアを追求する際に大いに役立つことでしょう。学生のみなさんに、輝
かしい未来が訪れることを願っています。
(了)
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GMUN日本代表派遣プログラムは、外務省「いっしょに国連キャンペーン」の協力団体として、メールマガジンのインタビュー作成を担当しています。メールマガジンのバックナンバーはこちらからご覧頂けます。
最終更新:2009年7月8日