第10弾 国際連合工業開発機関(UNIDO)東京事務所 西川泰藏代表インタビュー
今回は、2009年度GMUN日本代表派遣プログラムメンバーの高橋尚子が国際連合工業開発機関(UNIDO)東京投資・技術移転促進事務所(ITPO Tokyo)の西川泰藏代表にインタビューしてきました。
目次
●はじめに、UNIDOの役割について教えてください。
UNIDOは、国連の専門機関のひとつです。開発途上国や市場経済移行国の持続的な工業開発を支援することが主な仕事です。
我々は特に3つの点に焦点をあてて取り組んでいます。
第一に、貧困の削減。途上国における生産活動を通じた貧困の削減に取り組みます。
第二に、貿易能力の向上。グローバル経済に参入するためには、国際標準に適合した製品開発能力や品質保証・認証の仕組みを持つことが必要ですが、これは、途上国にそのためのキャパシティビルディングの支援を行なうものです。
そして第三に、環境エネルギー支援。これは、持続的工業開発にとって不可欠な、環境問題への対応と、エネルギーへのアクセスを同時に達成しようという取組みです。
●UNIDOは「国連工業開発機関」ですが、おなじ「開発」という言葉のついているUNDPとの関連や違いを教えて下さい。
UNDPについて責任を持って申しあげる立場にありませんが、公表されている資料などによりますと、まず、国連システムの中での位置づけが違います。UNDPは、国連総会の下に置かれた14のプログラム・ファンドの一つです。
一方、UNIDOは、国連経済社会理事会(ECOSOC)の下に置かれた15(注)の専門機関の一つです。
(注:世銀Groupを一つとカウントした数字)
次に、活動の違いについてですが、UNDPは国連のグローバルな開発ネットワークとして広く開発に関わる活動をされています。その中に「貧困削減」及び「環境とエネルギー」も含まれていて、これらの分野については、UNIDOとも関連が深く、最近は少なくなってきましたが、UNIDOがUNDPの資金によって関連のプロジェクトを実施するといったこともありました。まとめて申し上げますと、UNIDOは開発の中でも持続的工業開発に特化した専門機関ということです。
なお、先ほどの「位置づけ」の話に関連して補足しますと、専門機関の場合には、それぞれの機関独自の加盟国を持っています。また、独自の政策決定の仕組みや、政策執行機構、そして予算を持つことができます。これらの点が総会傘下のプログラム・ファンドとの違いだと思います。
●UNIDO活動方針については加盟国で決定しているということですが、激しい議論が交わされることもあったのでしょうか。
専門機関には、独自の政策決定・執行の仕組みが与えられているわけですから、メンバー国間で、その時々の情勢に応じてさまざまな改革論議が行われるのは当然で、UNIDOも例外ではありません。
1990年代に至り、冷戦終結を受けて、UNIDOの中で、そのあり方についての議論があったと承知しています。結果的には、1992年に、アメリカ、カナダなどがUNIDOから脱退しました。その後も、UNIDOが果たすべき役割についてその時々の世界の情勢に応じて重点化が行われ、現在では、先ほど申し上げた3つのテーマに注力しているところです。
●UNIDO東京事務所の役割について教えてください。
東京事務所は、UNIDOと日本政府との間で締結された協定に基づき1981年に設立されました。来年3月には、30周年を迎えます。開発途上国や市場経済移国の持続可能な経済発展を促進するために、日本からの直接投資や工業技術の移転を促進することが設立の主な目的です。
具体的には、途上国の職員を日本に招いて、投資、技術移転促進のためのプロモーションを行ないます。また、日本の政府機関、業界団体、商工会議所などのご協力の下に、セミナー開催、事例紹介、機関紙やHPでの情報提供、在京大使館向けのワークショップなども実施しています。
UNIDOはマルチラテラルな、国連システムの機関として、各国政府の二国間の支援や民間企業単独の取組みでは十分な投資促進効果が見込めないような分野で、全世界に存在する約60の拠点間のネットワークを駆使して、いわば先鞭をつけることが期待されている役割だと考えています。その意味で、日本の政府・政府機関によるバイラテラルな取組みとは相互補完的な関係にあると考えています。
●西川様がUNIDO東京事務所代表に就任された時のカルチャーショックなどがあれば、教えてください。
私は去年の7月にこちらの代表に就任しました。それまでは、経済産業省、直近は内閣府に国家公務員として勤めていましたが、その間、国際機関との関わりのある仕事を何度か担当していました。例えば、IAEA、WTO、ISOなどです。
UNIDOも本部はIAEAと同じウィーンにある国際機関ですから、ある種「土地勘」がありましたので、あまり「カルチャーショック」といったものは感じなかったというのが率直な感想です。
私は国家公務員として、主に、日本の産業政策、産業技術政策に従事していました。UNIDOの仕事も、言ってみれば、途上国の産業政策のお手伝いをすることですので、自分のこれまでの経験、知識、人脈などが生かせるのではないかと思っています。
ただ、日本の産業は相当進んでいますし、自分は特にハイテク関係の仕事を担当することが多く、途上国の産業レベル、技術レベルとは大きな開きがありますので、そういった点で「ショック」とは言いませんが、「ギャップ」を感じることはありますね。
●今後のお仕事への意気込みをお聞かせ下さい。
UNIDOは途上国の開発支援のなかでも、とりわけアフリカ諸国を対象に、そしてアグリ・インダストリー、環境エネルギー分野、中小企業振興などに重点的に取り組んでいますが、これらの分野はいずれも日本の企業などが技術・ノウハウ、経験をもっている分野で、その意味で日本からの貢献が強く期待されています。ぜひこれらの期待に応えられるように頑張りたいと思っています。
また、注目したいのは、「日本のような先進国が何十年もかけて辿ってきた産業発展のプロセスを、途上国が繰返す必要があるでしょうか」という点です。私は必ずしもその必要はないし、また環境・エネルギー問題が顕在化している中で、それはもはやそれは適切なアプローチとも言えない、と思っています。
昔は電話などの通信網を確保するためには、国中にあまねく電柱を立て、電話線を張るといった、大規模なインフラ整備作業が必要でしたが、今ではデジタル・モバイル通信技術の革新によって、はるかに短期間に効率的にインフラ整備ができるようになりました。電力網についても、太陽電池などの分散電源が普及すれば、大規模な送電網が不要になります。
このような技術進歩によって、インフラ整備の一部をショートカットできるようになりました。これは「後発者の利益」と呼ぶことができます。特に、通信技術の進歩のお陰で世界中の情報や知識、ビジネスチャンスに、瞬時に、かつ公平にアクセスできるという、フラットでグローバルな世界が実現しています。
これは途上国にとって大きな挑戦であると同時にチャンスです。途上国が上手くこのような流れに乗ってグローバル市場に参入でき、持続的な工業開発を達成できるように、少しでも力になれればと考えています。
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GMUN日本代表派遣プログラムは、外務省「いっしょに国連キャンペーン」の協力団体として、メールマガジンのインタビュー作成を担当しています。メールマガジンのバックナンバーはこちらからご覧頂けます。
最終更新:2010年6月22日
