第4弾 国連児童基金(UNICEF)東京事務所 功刀純子駐日代表インタビュー
目次
インタビュー前編:なぜ子どもに焦点を当てるのか/どのような取り組みをしているのか/日本政府との協力は
●ユニセフのホームページによると、ユニセフの理念は「全ての子ども達の権利が守られる世界を実現する」ことであると書かれています。なぜ、ユニセフは子どもの権利に焦点をあてているのでしょうか?また、なぜ子どもは人類の発展の基礎なのでしょうか?
児童の権利条約が国連総会で採択されたのは1989年です。今年は20周年記念なので、世界の多くの国がユニセフと共にこれを祝う予定です。この条約は経済的、社会的、政治的、市民的、文化的権利を含む全ての権利を網羅しています。
児童の権利条約は、国連総会で採択されて以降直ぐに国連加盟国の間で批准が進みました。そうした国々がこの条約を批准した理由は、子どもの脆弱性に所以する特別な権利に加えて、全ての子どもが平等な、基本的人権を持つという理念に賛同したからです。それゆえに、子ども達のために明確に示された権利が必要なのです。
採択以後、児童の権利条約はもっとも早く、そしてもっとも多くの国連加盟国に批准された条約となりました。アメリカとソマリアだけはまだこの条約を批准していませんが、この2ヵ国もこの条約に署名しています。つまり、この2ヵ国も条約を批准する意志があるということであり、これによって全ての国連加盟国が批准もしくは署名しているということになります。
この条約の中には、ユニセフは児童の権利条約の実施のために政府を支援し、進捗状況をモニタリングする役割があると記載された特別な条項があります。すべての政府は、条約を批准した後に第一次報告書を、また5年ごとにどのような進歩があったのか報告書を提出しなければなりません。児童の権利条約は、各国がその目標達成にコミットメントをするという法的な拘束力を持った文書なのです。
私は、世界中にいる全ての子どもが同等の権利を持ち、たとえ貧しくても紛争や自然災害の影響を受けていても同じ支援と機会に恵まれるべきという理念は非常に力強いと思います。それゆえに、各国政府のコミットメントが、ユニセフを含む子ども達を支援する人々にとってのグローバルな手本となるわけです。ユニセフは現在157の開発途上国や地域で活動しています。また、先進国には36のユニセフ協会があります。
子どもが人類の進歩と発展の礎であるという考えは、道徳や倫理的側面のみならず、3才までの期間が子ども達の発達にとっては非常に重要であるという具体的な身体的、発育的要件によるものです。将来の頭脳の成長と潜在能力の90%は、この非常に初期段階で決定してしまいます。ですから、保健ケアや栄養、安全な水、衛生、教育サービスの提供を考える際に、子どもが優先されなければならないのです。
もしある国が経済的発展を望むなら、それは国民の持つ潜在能力にかかっています。生産的で健康な市民に育ち、身体的発達と知能発育を最大限に活かすには、子ども達にサポートを提供し投資しなければなりません。
非常に興味深いことに、韓国やマレーシア、シンガポールといった新興国の発展の歴史を見てみると、子ども、教育、そして社会開発分野への投資を行い、結果として経済成長率を上昇させ、また国家の安定性やよい統治にも貢献したことがわかります。
ユニセフは、その理念を達成するためにどのように子ども達が直面する問題に取り組んでいるのでしょうか?また、多くの国連機関がユニセフの活動分野に対して既に取り組んでいる中、ユニセフは他の国連機関やNGOとどのように協力しているのでしょうか?
ユニセフは、もっとも支援を必要としている子どもに焦点を当てようとしています。それに加えて、統合的な方法で女性や家族、社会保護システムの強化を支援しています。
そうした取り組みは、開発途上国で政府と共に行う国別協力プログラムによく現れています。ここ10から15年、国連システムの主要な開発メンバーは、開発や人権に焦点を当てた共通国別評価を実施しています。その後に、国連開発援助枠組を作り、その国においての優先課題と洗い出し、どのような国連による支援が戦略的かつ効果的であるのかを明らかにします。そして、各国連機関は各々の担当する分野を、自分達の持っている強みや比較優位性を活用出来るように慎重にきめ細かく割り当てます。
ユニセフは、国家レベル、サービス提供レベル、そして地域レベルと、異なるレベルで活動しています。国家レベルでは、我々はその国の開発・人権状況を考慮に入れながら、途上国政府が政策や法の制定を行うことを支援しています。
サービス提供レベルでは、トレーニングや技能・能力の強化を通して、第一線で活動するサービスプロバイダーを支援します。また地域レベルでは、プログラムをより効果的なものとするために、その国の子どもや若者の意見の取りいれることを含め、コミュニティや関係者の参加を促します。また、ユニセフは地方行政やNGOといっしょに活動します。なぜなら、能力とリソースがあり、地元の人々との意志の疎通に長けた専門家と協力することは効果的だからです。
ユニセフが行っている活動のうち、3割は緊急もしくは人道支援です。多くの場合、ユニセフは直接に支援を行い物資やサービスを届けますが、子どもの人権や特別なニーズに焦点を当てた支援を提供できる現地のNGOと共同で活動することもあります。
日本政府はユニセフとその活動をどのように支援していますか?
今年は、1949年10月から始まった日本とユニセフのパートナーシップ樹立60周年にあたる年です。日本は第二次世界大戦後、子どものための脱脂粉乳やその他の救援物資などの支援をユニセフから受けていました。
そうした支援は1964年まで続いたのですが、興味深いことに、1954年には日本はユニセフのドナー国になっていました。自らが支援を必要としているにも関わらず、日本の人々がより劣悪な環境にある子どものために手をさしのべたいと思っていたというのはとても素晴らしいことです。
第二次世界大後の早い時期から、ユニセフは日本政府と日本の人々に支えられてきました。今日、日本ユニセフ協会は、ユニセフ協会の中でも、資金調達に一番の成功をおさめています。ユニセフへの募金の40%は個人寄付から来ており、それ以外は企業や団体などからの献金で成り立っています。
また、日本政府もユニセフに大きな貢献をしています。例えば、1980年から現在までに日本は18億USドル以上の拠出をしており、常にユニセフにとってのトップ10ドナーでした。
このような協力は大変価値のあるものです。なぜなら、世界の子ども達の命を救い、より良いものにしていくというユニセフの活動は、資金があってこそ可能なのです。
また、国際開発における日本のリーダーシップも重要です。例えば、日本はMDGs策定の際に重要な役割を果たし、人間の安全保障という概念とその活用について先鞭を付け、沖縄や洞爺湖などのG8サミットにおけるコミットメントのような保健分野における主要なイニシアティブを発足させました。
日本が貢献した重要な分野として、人的資源もあげられると思います。現在、100人近くの日本人スタッフがユニセフで活躍しており、その90%は現地での活動に従事しています。
日本政府は国連システムの中で2-3年働くためのJPO(Junior Professional Officers)と呼ばれるプログラムを支援しており、JPOとしてユニセフで働いた人のおよそ半数は、正規職員のポストを含めて国連機関に残ることができます。これは非常に高い確率であり、ユニセフにとっても大きな貢献となっています。
インタビュー後編: ユニセフで働こうとしたきっかけは?/ユニセフ駐日代表のお仕事とは?
国連機関、特にユニセフで働こうと決めた理由、きっかけは何でしょうか?
最初のユニセフでの勤務は外務省のJPOプログラムを通したものでした。ただ、私にとってユニセフに関わるようになったきっかけは、大学院生の時に日本で以前勤めていた新聞社のために、「子どものための世界サミット」の記事を書くことでした。サミットはユニセフが主催しましたが、子どもに関しては初めての大きなグローバルレベルの国連会議でした。
子どもに焦点を当てた1990年に開催された会議ということで、強い印象を私に与えました。その年というのは経済発展に焦点を置いた構造調整と開発援助の10年に続く年であり、ユニセフは人間開発と人間の顔も心にとめて、子どもと女性にも同様に投資しなければいけないと主張していました。また、予防可能な疾病や栄養不良、劣悪な衛生環境によって4万人もの子ども達が毎日死んでいるという事実も取り上げられました。これらはほとんどの場合、予防接種やワクチン、より良い栄養摂取や適切な下水設備と安全な水等によって防げます。
このサミットを通じて、ニューヨークのユニセフ本部の広報局のスタッフに出会いました。ジャーナリズム・スクールを卒業後、ユニセフが非常勤の編集員を必要としていたので、1ヶ月間勤務しました。その後、宗教指導者や市長、議員とのパートナーシップを構築することに取り組んでいたパブリック・アフェアーズ局がアドボカシーと広報活動のコンサルタントを探していたので、私はそこで2年間勤めました。最終的に、JPOプログラムを通じてユニセフでの現場経験を積みました。私はベトナムへ行き、アシスタント・コミュニケーション・オフィサーとして働きました。
大切なのは様々なことに挑戦しようというオープンな姿勢だと思います。様々な地域で働くことは役立ったと思います。私は東京に来るまでに、ベトナム、バングラディッシュ、そして6つの中東湾岸諸国、東欧のボスニア・ヘルツェゴビナ、そして二度NY本部で働いてきました。もし国連でのキャリアを目指するならば、様々な地域や様々なタイプの仕事、可能なら本部と現場での仕事を経験するのがよいでしょう。
ユニセフの仕事をしていると、活動が直接的に子ども達のためになっていることが本当に分かります。彼らの命を救ったり、生活水準を改善したり、将来へのチャンスを伸ばします。これが私にとって一番の元気の源であり、動機づけです。何か意味のあることをして、そしてそれが影響を与える、ということだと思います。
ユニセフ駐日代表としてどのようなお仕事をなさっていますか?
ここで行われているのはチームでの仕事ですね。私の主な仕事は、そうしたチームを管理・サポートすることです。この事務所の中には、資金調達に焦点を当てて、日本の拠出金やその貢献が現地で上手く使われているか、また予定通りに実施されているのかという事を確認するために、現地事務所と日々連絡を取っているスタッフがいます。彼らは、人道危機への対応やミレニアム開発目標の達成といった日本の政府開発援助の優先順位に沿って、新しいプロポーザルの作成を手助けしたりしています。
ユニセフを通した日本からの支援は主に保健、教育、そして人道危機への対応に絞られています。また75%以上の日本からの拠出はサハラ以南のアフリカへ向けられています。本質的に、私達のチームは、子ども達への支援額を常に増加しようと試みています。子どもは人類の発展の礎であり、多大な影響と効果の出ると分かっている分野に政府開発援助が集中するならば、それは効果的に使われるとユニセフが信じているからです。
私達のチームは、同様にパートナーシップの構築にも取り組んでいます。その中には、議員も含まれますが、彼らは他の重要な分野の中でも政府開発援助にどれだけの予算を割くのかを承認するので重要ですし、またそれ故に彼らにとっても、そのお金がどこに行くのかを知る事は大変重要です。約100名もの優れたメンバーによるユニセフ議員連盟があり、私達はとても恵まれた状態にあります。また、ユニセフの国際親善大使に初めて任命された一人であり、今年で25周年記念を迎える黒柳徹子さんと活動できることも光栄です。
私達は同様に、国連とユニセフに対する認知をより高めようとしています。私達は、東京での国連職員とのタウン・ミーティングで事務総長が強調されていたように、“Delivering as One”を達成しようとしています。ユニセフの活動や国連についての大学での講演や一般向けのプレゼンテーションなどでUNHCRやWFP、UNDP、UNFPAやILOと言った他の国連機関と一緒に参加しています。
人々は自分達の税金がどのように使われているのか、日本の支援がどのような影響を与えているのかを知りたがっています。また、より多くの若い人達に国連での仕事に応募するように勧めたいと考えているので、同僚が就職説明会の際に出向いたりしています。(了)
GMUN日本代表派遣プログラムは、外務省「いっしょに国連キャンペーン」の協力団体として、メールマガジンのインタビュー作成を担当しています。メールマガジンのバックナンバーはこちらからご覧頂けます。
最終更新:2010年3月7日
