第1弾 国連開発計画(UNDP) 村田俊一駐日代表インタビュー

UNDP村田俊一駐日代表


国連開発計画(UNDP)
村田俊一駐日代表へのインタビューを担当したGMUNの小森谷(ICU4年)です。UNDPの事務所は渋谷にある国連大学の中にあり、このインタビューも国連大学の中で収録されました。今回インタビューをさせて頂いた村田駐日代表はとても気さくな方で、拙い質問にも笑いながら丁寧に答えて下さいました。また、その言葉の端々からは、開発に対する熱い思いが感じられました。
インタビューは前後編に分かれており、前編ではUNDPの活動内容や日本との関わり合い、ミレニアム開発目標について伺いました。後編では村田代表のキャリアや、これから国連機関を目指そうとしている日本の若者へのメッセージを伺いました。UNDPという名前を聞いた事が無い人も、これから国連で働きたいと思って居る人もぜひご覧下さい。(小森谷)

目次


インタビュー前編:MDGsとは?/UNDPとは?/なぜ日本は多国間援助をするのか?

国連開発計画(UNDP) 4つの重点分野を柱として活動しており、その内
の一つが「貧困削減とミレニアム開発目標(MDGs) の達成」ですね。このMDGs
とは何ですか?また、この目標にはどのような意味があるのでしょうか?

MDGsは、政策の枠組みとして、国際社会がとるべき行動の指針となっていま
す。日本政府が1996年に経済協力開発機構・開発援助委員会(OECD-DAC)に
おいて提案した数値目標もMDGsの源流となっています。この開発目標や2000
年9月に採択された、国際社会の目標である国連ミレニアム宣言を統合し、
共通した枠組みとしてまとめたものがMDGsなのです。各国家の時間や金銭的
な支援の実施において濃淡が生じないように直接支援するための政策の一つ
の枠組みになっています。UNDPはこれらの重要な枠組みが活用できるように
支援を提供している組織なのですね。

「貧困削減とミレニアム開発目標(MDGs)の達成」とともに「民主的ガバナン
ス 」、「危機予防と復興」そして「環境と持続可能な開発」4つがUNDPの重
点分野なのですが、そこで共通しているのは、Human development(人間開発)
の視点です。支援と言うときは金銭的な部分が考えられがちです。しかし、
お金とともに大切なのは人的な資源であり、これらを活用して、人間開発の
目的である人間の潜在能力を最大限実現できるようにすることが重要なので
す。人間の可能性を広げてゆくためには、生きていくにあたって必要欠くべ
からざる要素を満たすことをしっかり視野に入れなければなりません。金銭
的支援の分配や使い道をよく考えていかなければ、人間開発は達成できない
のです。UNDPは、そのようにして警鐘を鳴らす役割も担っています。

●UNDPは、まだ日本では知名度が低いように思います。

組織の規模や実施する支援の規模に比べて一般の方々の認知度が低いとした
ら、それはUNDPが縁の下の力持ちタイプの組織だからでしょうね。UNDPは、
危機予防や復興支援、選挙支援など、一般にガバナンス分野と呼ばれる分野
においての支援を数多く行っています。これは、私たちは、危機そのものを
予防に重点を置いているためです。インフルエンザにかかってから予防接種
をしても遅いように、支援が必要な国々において危機を予防したり、危機が
起こってしまった場合にも状況を軽減できるような力を強化できるようにサ
ポートするのが、UNDPの仕事だと思っています。

●UNDPと日本は、どのように関わっているのでしょうか。途上国の開発であ
れば、二国間援助でも達成出来るように思えます。UNDPのような機関を通し
た多国間の開発援助・支援にはどういった長所があるのでしょうか?

まず、二国間支援の特徴から考えてみましょう。二国間支援というのは日本
と相手国双方の国益の反映が主ですね。しかし、環境問題、ジェンダーの問
題、貧困の問題、そして日本がおかれている依存度の問題などを考えてみる
と、グローバル化が進んだ現在の世界では二国間だけでは処理できない問題
が多々あります。実は、日本という国は様々な点で海外への依存度が非常に
高い国なのです。日本の経済規模は世界全体の約11%を占めていて、日本人
は人口に比したら比較的大きな経済的恩恵を受けています。その中で、二国
間援助だけではなく、多国間援助、国際機関を通じた支援を行っていくこと
は、世界全体に対する一つの約束事、コミットメントであると考えるべきで
す。

実際、二国間と多国間の援助を組み合わせ、関連させることによってグロー
バルな世の中はうまく機能するのです。多国間の枠組みにメリットがあるか
らこそ世界の国々は国連システム等に参加しているのです。そこは各国が対
話し国益のための接点を見つけてゆく為のフォーラムであり、そのようなフ
ォーラムは国連以外には無いのではないでしょうか。

UNDPは途上国における開発支援を主に行っていますが、私は、日本は途上国
開発において国連を通してリーダーシップをさらに発揮するべきだと考えて
います。ODA(政府開発援助)によって、日本は外交手段を具体的に行動で表す
ことのできるのです。この昨今の経済危機の中で、日本が二国間と多国間を
使い分けながら支援を行っている現状を維持してゆくことがとても大切なの
ではないでしょうか。

インタビュー後編:どうして国連に?/学生のうちにしておくべき事は?


●村田代表は大学や大学院で様々な分野を勉強されていますが、それは現在
の仕事にどのように関わっていると思いますか?

まず、私は最初から国連職員を目指していた訳ではありません。私も人間開
発報告書の信奉者ですから、人間は進化すると信じており、専門性というの
は環境によって変わるものだと思います。私の場合、最初は日本における公
共政策の地方自治論、財務管理等を勉強していましたが、そのうちに他国で
はどうなっているのだろうと疑問に思い、世界各国の政策を比べてみて、そ
の違いに驚きました。そして、比較地方自治論を学び、その中で国際政治経
済を勉強したり、自分の仮説を科学的に検証するために統計学も勉強したり
しました。そうしていくうちに私自身が「進化」していったのだと思います。
進化していく中で必要とされるのは、ロジカルな考え方、ロジカルなリサー
チデザイン、そして自分の考えを言葉少なに簡潔に説明し、方向性を定める
という力でしたね。

●いつ頃から国連システムに関わるようになったのですか?

アメリカの大学院の時にインターンシップに受かったことがきっかけです。
それがおもしろくて、JPO の試験を受けるようになりました。国連で働くこと
に興味が出たのも偶然ですね。

●村田代表はどのようなお仕事をなさっているのか、具体的に教えて頂けま
すか?

主な仕事は3つあります。1つ目は、多国間と二国間の援助協調における交
渉です。危機管理に関して、国別に議案設定をするといった政策に関連する
仕事です。2つ目は、パートナーシップの構築です。民間やNGO、メディア、
教育機関と協力し、日本でパートナーシップを組めるところと国内での啓蒙
活動について話し合い、海外のUNDPカントリーオフィスと協力しあえる関係
も模索しています。3つ目は、開発協力の促進です。併せて人間開発報告書
(Human Development Report )
のキャンペーンも行っています。開発教育の
中では「どうして日本ではこのような事実を知られていないのだろう」とい
うところからスタートし、また、社会問題を分析するときに識字率や平均寿
命、そして必要最低限の生活といった社会的指標などを見ていくことが大切
であることを示しながら、開発教育と人間開発報告書を組み合わせた活動を
しています。

●日本には国際機関への就職を考える若者がたくさんいると思いますが、実
際に今何をすれば良いのかわからないと感じている若者に、何かアドバイス
を頂けますか?

国連職員になるということをゴールに設定していらっしゃる方もいらっしゃ
ると思います。しかし、何よりも大切なのは、その方向に向かうプロセスが
大事であると私は考えます。
なぜなら、そのプロセスを経ることによって自分の世界が開けてきますし、
自分の考えの殻を破ることに繋がるからです。国連職員になることをゴール
と思わなくても、高校や大学で常に努力と勉学に勤しむことを忘れず努力を
続けられる人が、あるきっかけを得て国連職員になるのではないかと思いま
す。また、国連職員になるというゴール設定して成就しなかったとしても、
そのプロセスで努力した自分を褒め称えるような心構えであれば、たくさん
の仲間に囲まれ、様々な道が開けてくるのではないでしょうか。

●学生の内にはどのような準備が必要でしょうか?

学生の時には単発的に専門を持つのではなく、一般教養を身につける事が大
切だと思います。サークルで力をつけたり、国際NGOに参加してみたりとい
ったことを継続することが重要ですね。また、自分でMDGsの8つあるゴール
の内1つについてプロジェクトを立ち上げてみるのも、おもしろいかもしれ
ませんね。

●村田代表は最初から国連職員を目指された訳ではないとおっしゃいました
が、代表の周りの方々はどうですか?

最初から国連職員を目指していた人はそう多くはないかもしれませんね。国
連職員といっても様々な機関があります。国連職員になりたいというのは同
じでも、国連本部で世界とのかかわりを実感したいという思いを抱く人や
UNDPのように途上国の現場で汗を流して活躍したいという人など色々な人が
いると思います。国連職員を目指す上では、国連システムを理解し、カテゴ
リーに分けて考えることが大事になるでしょう。人道支援政策をやりたいの
か、人間開をやりたいのか、国連の総括的なことをやりたいのかによって、
目指すべき機関は変わってきます。そういう意味では、国連にはたくさんの
エントリーポイントがあり、同時にそれが国連システムのメリットだと言え
るでしょう。国連職員になると、色々な機関への異動が可能です。各々の機
関で、専門性を持った人と議論を交わすのはアカデミックな意味でも非常に
楽しいです。たとえ短い期間であっても、本音を言い合ってプロジェクトを
構築していくプロセスは、一度経験すると辞められなくなりますね。辞めた
としても、また戻ってきたくなることでしょう。

●日本では国連という単語が曖昧に使われているように思います。一般の
人々の理解と国連システムの実情にはギャップがあるのではないでしょう
か?

日本では、これまで国連といえば安全保障理事会の分析が中心で、それが国
連全体のイメージとなっています。けれども実際には、UNDPをはじめとした
経済社会理事会関係の諸機関こそ、貧困、ジェンダー、環境などの問題や皆
さんの関心の高いエイズやSARS、インフルエンザといった全世界規模の問題
について対応にあたっているのです。これらの活動こそが、更に注目される
ことを私は期待します。(了)

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GMUN日本代表派遣プログラムは、外務省「いっしょに国連キャンペーン」の協力団体として、メールマガジンのインタビュー作成を担当しています。メールマガジンのバックナンバーはこちらからご覧頂けます。

最終更新:2009年6月23日

 

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