模擬国連活動は国際連合などで行なわれている国際会議の模擬会議(シミュレーション)を行なう活動です。参加する一人一人は、一国の大使としてその会議の議題に対して政策を立案し、その国の利益の追求を決議案の採択を通じて目指します。この過程において、担当した国の利益が何かを考え、また対立する国と如何にして 合意を得るのかを考えます。そして担当する国の利益を通すために交渉を進めて行く事となります。模擬国連は交渉を通じて、コミュニケーションスキルを得る事も出来ますし、また人前での発言をする機会にも恵まれ、パブリックスピーキングの能力も磨けます。欧米ではこういった特徴から「模擬国連」は中高及び大学で学習ツールの一つとして採用されています。
模擬国連は1923年にハーバード大学にて始まった活動です。設立当時は国際連合はなく、国際連盟であったので「模擬国際連盟」といっていました。世界初の全世界をカバーする国際機関の役割をシミュレートを通じて理解することにその目的があったようです。
日本では1983年に上智大学にて当時教授であった緒方貞子氏を顧問としてその前身となる活動が始まり、今では日本中の大学、高校で行なわれています。また世界では60カ国以上で行なわれており、アジアだけでも模擬国連に関する国際大会が中国や韓国、シンガポール、台湾などで行なわれております。日本でも1991年に第一回アジア模擬国連大会が開催されております。
(参考ー世界の模擬国連)
模擬国連活動は、主に「模擬会議に参加する前の準備」「模擬会議中の行動」そして「模擬会議後のレ ビュー」いう3種類にわけて説明することができます。以下の1~3は、模擬会議前に参加者が準備する準備段階のことであって、4は模擬会議中の行動に関すること、5は会議を通じて学んだ事を全体で共有し国際問題を改めて見直す活動をまとめたものです。
会議ごとに参加国が設けられており、その中で自分が担当したい国を選びます。
会議ごとにある、“Background Guide”という解説書を参考に、「何が問題として話し合われているのか」、また「何がその問題の背景にあるのか」 そして「その問題が今までどのようにして国連で話し合われてきたのか」といった点に関しての理解を深めます。
模擬国連活動においては、参加者がそれぞれ担当国の視点にたって会議に臨むことが求められるため、担当国の調査・研究が重要となります。具体的には、「担当国の基本データの収集」「基本データから『国益』を考える」「担当する国の過去の政策を分析する」といったことを通じて、担当国の会議におけるスタンス(立場)を固め、会議の論題に対する政策を考えていきます。
会議では、「自国の政策」をもとに、演説(speech)や他国との交渉(negotiation)を通じて、会議の意思決定の下地となる決議案(DraftResolution)を作成していきます。最終的には、担当国の国益を追求しつつも、国際社会にとっても有益かつ実効的な解決策・対策を盛り込んだ決議案を投票にかけ、決議(resolution)として採択します。
会議終了後に行なうのがレビュー(振り返り)です。模擬国連が「おままごと」ではない理由がこの作業にあるといっても過言ではないでしょう。レビューは大きく分けて二つの側面から成立しています。1.マネージメント 2.議題 の二つです。
マネージメントでは、自らの担当国の利益を追求するために適切な会議行動が出来ていたか、目標ゴール設定の妥当性などを振り返り、参加者はお互いにコメントをし、マネージメント能力の向上を図ります。
また議題面のレビューでは、模擬会議でのロールプレイングを通じて、理解した担当国の利益とその元にある文脈(歴史的構造、パワーポリティクス、内政との関わり)を全体で共有し、議題に関してより多角的な理解を追求します。
上記のレビュー活動を通じて、より多角的な視点の獲得とマネージメント能力の向上を図り、国際人としての感覚を得られれば幸いです。
このように模擬会議のプロセスを通じて、参加者は議論する国際問題や担当国の政策についての理解を深めると共に、国際機構の機能や構造、そして国連の可能性と限界を実感することができます。また、多国間外交や現代の国際関係を体験的に学習することによって、現代の複雑な国際政治の仕組みを理解することができ、さらに、そのような複雑な国際政治を通して問題の解決策・対策を探ることによって、これからの国際社会に必要とされる人材の育成にも大きく寄与することになります。
模擬国連駒場研究会、通称「こまけん」は、2008年に立ち上がった模擬国連を行なうサークルです。駒場研究会では通常の模擬国連会議だけではなく、様々な活動を行っています。 議題に対して、各自が個人の立場から大まかな理解をし、勉強会を通して個人としての意見を形成した後、各自が担当国の大使という立場で会議を行ない理解を深めた後に、 それぞれの行動した背景や議題に対する個人という立場での意見を話し合うレビュー(振り返り)の時間を設けております。
このような活動によって国際問題に対する多角的な思考法を養えると考えています。 また模擬国連以外のユース団体などとの恊働、交流も豊富に有り、刺激にとんだ学生生活が行なえます。
こうした活動内容の背景には活動理念として、模擬国連活動を通じて、将来社会に貢献出来る人材を育成するということがあります。駒場研究会での活動を通じて、知識面、マネージメント面の向上だけでなく、これからの社会に必要とされる人材となるお手伝いができれば幸いです。