現在の金融危機における発展途上国の保護 (総会第二委員会)

背景

2008年の金融危機によって世界中がダメージを受けた。とりわけ発展途上国が受けた打撃は大きい。その理由は大きく4つある。まず、外需需要の縮小。2、海外送金額と直接投資の減少。3、商品価格の大きな変動。そして最後に先進国からの開発援助額の縮小である。世界銀行の報告によると、これらの理由で、2009年に5500万人が新たに極貧状態に陥っており、2010年にはさらに9000万人が極貧困状態に陥るとされている。(ここで言う極貧困状態とは、1日に1.25USD以下で生活を営んでいる状態を指す。)

特に、先進国からの援助額の縮小は既存の様々な開発プログラム及び目標に影響を与える。G20諸国は2010年までに全体で1540億ドルのODAを拠出する予定だったが、実際は約300億ドル足りていない。この理由からも、援助額の縮小問題の解決は急務である。援助額の縮小によって影響を受ける既存の発展途上国開発目標の代表例として、ミレニアム開発目標(MDGs)がある。MDGsは、2000年9月のミレニアムサミットで採択され、2015年までに達成すべき目標として8つの最重要目標を定めている。しかし、2010年単一で新たに9000万人が極度の貧困に押しやられる現在の状態では、1015年までにMDGsを達成する事は困難である。

同会議におけるデンマークの方針

デンマークは、自国GNIの0.7%以上の額のODAを拠出するというMDGsの設定を果たしている数少ない国である。さらに、長年アフリカ諸国を始め最貧国への援助を徹底して行ってきている。そのため、現在の金融危機の最中でもMDGs等の開発目標が中断される事なく、確実に継続され得る程度の資金を確保する事が最重要だ、というスタンスを私はデンマーク大使としてとる方向である。

解決策

現在、同議題に関して様々な観点から解決策が議論されている。議論されているものとして、大きく5つの解決策が存在する。1、マクロ経済に基づいた景気刺激策の調整。2、国際金融制度の改革。3、経済の国際統制。4、監視制度、説明責任制度、安全保障システムの改善。5、多国間主義の強化。

しかし、国際社会が同議題に関して議論する際に必要な観点は、現在の金融危機で減りつつある開発援助額をいかに維持あるいは増加させ、既存の開発目標を達成に導く事ができるかである。

デンマークがとる解決策:「国際金融制度の改革」

そこで必要なのが、国際金融制度の改革である。

ではどのような改革を行うのか。「国際金融制度の改革」として、国境を越えた金融取引に税を課す制度を構築する。すなわち、国際金融取引税の導入である。ある主要通貨国は、自主的に国際金融市場での自国通貨取引に税をかける事を決める。(文末の「残る問題」参照)

使途

現在議論されている為替取引税は、0.005%という極めて低い税率を課す方向で議論されている。この税率で、現在為替市場で取引されている主要通貨に税を課すと、年間約3000億ドルの税収が見込める。この一部を既存の開発プログラム及び開発援助組織に提供する。そして、残りの一部を課税される通貨の発行国に提供され、国内金融制度の整理及び管理、金融政策、財政政策等を中心に使用する事ができる。この事によって税収の恩恵を受ける発展途上国と、自国の通貨が課税される国はWin-Winな関係で結ばれる。

為替取引税が国際社会にもたらす利益(対外的な目的)

今まで、国内においては様々な方法で金融取引に直接的な課税がなされてきた。しかし、国境を越えた取引に関しては、現在国際制度としては、なんら税金が課されていない。この為替取引を導入する目的として以下がある。

1、税収の一部が既存の開発プログラム及び、開発援助組織に提供する事によって、MDGsの達成をより現実に近づけ、同時に、今後の持続的な援助基盤を確保するため。

2、国際金融取引の中でも外国為替取引は、一年間で約1000兆ドルも取引されており、グローバリゼーションの恩恵を最も受けているとされている。しかし、その大半は裕福者の資産増加を目的とした利益追求型の短期的な売買(マネーゲーム)である。そのような国際金融取引によって引き起こされる大きな商品価格変動を一部抑えると同時に、極端な富の不均衡を是正するため。

3、過去の国際的な不均衡や金融危機は為替市場によって引き起こされたものがいくつかあり、今後同様の事が再発する事を防ぐため。

デンマークが受ける利益(対内的な目的)

同税をデンマークが押し進める事によって、次の利益をデンマークは享受できる。

1、同税収によってデンマーク政府は、望ましくない国内の税を上げる必要性が減る。

2、必要な政府支出が削減される事を防ぐ事ができる。現在、政府支出を削減するために、教育や保健等の公共の福祉の維持に必要な政府の支出をも削減せざるを得なくなっているが、そのような事態をこの税収入で回避できる。

3、0.005%という極めて低い税率であるが、ある程度の為替の安定化が見込まれる。現在デンマーククローネはユーロとヨーロッパ為替相場制度(ERM-II)を採用しており、対ユーロ為替相場の変動が2.25%に抑えられている。そのため、ユーロの安定も直接デンマーククローネの安定そしてデンマーク経済の安定に繋がる。

3、政府予算が、国内金融機関のシステムによって左右されにくくなる。

4、現在の金融危機で発生した国内問題を解決する予算を確保できる。

5、最後にデンマークは国際社会において経済的、社会的に平等な社会の構築の先頭を切る事ができ、同分野で高いリーダーシップを獲得する事ができる。

残る問題

同税制は、タックスヘイブンを含むあらゆる場所での取引を課税対象としたいのだが、技術的に可能なのか。そしてどの様な国際機関がそれを管理する事ができるのか。例えば、為替取引であればContinuous Linked Settlement(CLS)の制度を活用して国際的な課税システムを構築する事は技術上可能なのか。

もし技術上不可能であれば、合意を得た多国間でのみの取引に課税するべきなのか。