武器の非合法取引 (総会第一委員会)



Ⅰ 序論
 冷戦後,武器の非合法取引によって助長された紛争が数多く発生してきた。安全保障理事会のレポートによると、世界には少なくとも8億の小型武器が存在し,それらは毎年5万人もの被害者を出している。したがって、小型武器は事実上の大量破壊兵器といえる。このように甚大な被害を引き起こしうる小型武器の非合法取引を取り締まるために開かれたのが今回の会議である。



Ⅱ 論点
1. 各国の価値観
 各国の武器取引への価値観は大きく二つに分かれる。平和を作り出すために武器を使用するという考え方と、同じく平和を作り出すために武器を規制するという考え方である。前者は、不法な武器の製造や取引は規制しつつも、自衛のために市民の武器保有を認め、また抑圧的な国家に抵抗するために非国家アクターへの武器輸出を許可するべきであるという考え方であり、銃社会の国々や、武器輸出が盛んな国々に見られる価値観である。一方、後者は市民の武器保有や非国家アクターへの武器輸出を規制する考え方である。2001年に成立した武器規制のための行動計画(PoA)の策定プロセスにおいても、これらの価値観は対立し、その結果、PoAは合法的な武器取引や市民の武器保有、非国家アクターへの武器輸出の規制を含まないものとなった。


2. 武器規制のための政策
 武器規制のための政策は主に二分野に分かれる。武器の供給側への規制と需要側への規制である。前者にはマーキング&トレーシングや不法なブローカリングの規制などがあり、後者には途上国へのキャパシティービルディングやDDRが挙げられる。


3. 武器輸出条約(ATT)
 これまで、ATTを成立させるために専門家パネルや作業部会が設置されてきた。そして昨年にはATT作成のタイムテーブルが採択された。このようにATTを成立させるための機運は今日高まっている。



Ⅲ 今議題におけるデンマークの価値観
 今回の会議でデンマークは以下の三つの価値観に沿って行動したい。


1. 開発援助
 デンマークは持続可能な開発を通しての貧困削減を開発援助政策の中心においている。しかし、武器の不法取引によって助長される紛争は、そのような持続可能な開発を妨げている。デンマークは持続可能な開発を達成するために紛争を解決、予防するために武器の不法取引の問題に対処しなくてはならない。


2. テロとの戦い
 デンマークはテロ撲滅のために戦ってきたが、それらのテロリストは使い勝手の良さから通常兵器を使用する。よって、不法武器の拡散はテロを助長する恐れがある。


3. 人権保護
 不法武器は人権侵害に使用される恐れがある。人間の安全保障を促進する先導的立場にあるミドルパワーの一つであるデンマークは不法武器による人権侵害を看過することはできない。



Ⅳ 今会議でのデンマークの政策
 これまでのアプローチと上記の三つの価値観に基づいた、今会議におけるデンマークの政策はPoAの履行の促進とATTの成立のための準備の二つの分野に分かれる。


1. PoAの履行の促進
① 厳格な武器の国際的な追跡システムの構築
PoAの履行を促進するためには、より厳格な武器の国際的追跡システムの構築が必要不可欠である。2005年、国連総会は武器追跡のための国際的手段(International Instrument)を採択したが、これには二つの問題点がある。一点目は、参加国が非常に少ないことだ。多くの途上国は技術不足や、資金不足を理由に参加を辞退し、参加国は60国程度にとどまった。二点目は、市民の武器保有や合法武器取引の規制を持たないことだ。これらの項目はPoAの策定交渉の過程と同様に、国内規制の緩い国々の反対によって国際的手段から除外された。
 これらの欠点を踏まえ、今会議でデンマークは自国の武器規制を参考に、以下のより厳格な追跡システムを提案したい。デンマークは各国に火器保有を許可された全市民、国内の武器製造・取引、輸出入を記録する機関の設置を要請する。その機関は、それらの記録において、武器の種類、製造者、モデル、マーク、口径などの情報を残すものとする。このような追跡システムの下で、合法的な取引も含めたすべての武器取引を追跡することができる。
 しかし、議場においては、このような追跡システムには主に二種類の国々からの反発が予想される。まず、市民の武器保有に対して厳格な規制を有していない国々からの反対が予想される。しかし、このような国からの反論を想定し、この政策は市民の武器保有を禁止しているわけではない。デンマーク自体、国民の武器保有を許可している。違いは、デンマークが武器保有に対してより厳格な規制を有していることだ。よって、デンマークのような適切に追跡されている武器保有を許可する有り方は各国に適用されうる。次に、途上国のような資金や技術が不足した国々からの反発が予想される。そのような国に対してはデンマークが開発援助を重視しており、武器取引の取り締まりが持続可能な開発に資することを説明したい。


② 武器取引のブローカリングの規制
 武器取引のブローカリングに関しては、武器の追跡と違い国際的手段が構築されていない。そこで、近年の前進を踏まえ、追跡システム構築と同じプロセスをたどって、ブローカリングに関しても、国際的手段を構築したい。そのために、今会議においてデンマークは不法ブローカリングに関する国際的手段を構築するためのオープンエンデド・ワーキンググループ設置を提案したい。また、そこにおいてはそれぞれ2週間の三回の会合を開き、国際的手段に関する交渉を行いたい。


2. ATTの成立のための準備
人権の保護のためにも、デンマークはATTを効果的かつ現実的なものにしなくてはならない。そこで、今会議ではデンマークは将来のATTに関する議論の前提となる決議を作りたい。今会議でデンマークは以下の4つの条件のいずれかに当てはまる場合の、武器輸出の禁止を提案する。

① 国際法の下での各国の義務に違反する武器の国際的取引
これらの義務は国連憲章、安保理決議、その他の条約や国際的な慣習を含むものとする。ただ、それらの条約などに批准していない主な武器輸出国からの反発を想定し、各国の義務は、たとえば対人地雷禁止条約に批准していない国家はそれに拘束されないなど、それぞれの国々が拘束される取り決めの下での義務のみとする。


② 輸出が国際法違反になる恐れのある国家への武器の輸出の禁止
国際法違反の判断には安保理の禁輸措置を参照する。このような項目には抑圧的な国家からの反対が予想されるが、自衛のための合法的な武器の製造、取引は禁止しないことを説明したい。


③ テロリズム、組織犯罪、地域の不安定化、持続可能な開発の阻害に関わる武器の国際取引


④ 武器の追跡に関する国際的手段における「違法」の定義に当てはまる武器の国際的取引



Ⅴ 結語
 今議題、武器の非合法f取引に関するデンマークの政策は以上である。デンマークは今日の違法武器へのアプローチの問題点を踏まえた上で、自国の価値観に基づいてこれらの政策を立案した。これらの政策の履行を通して、国際社会は今日のアプローチにおける問題を克服することができるはずである。デンマークは武器の非合法取引を解決するために、今会議において全力を尽くしたい。