国連総会第6委員会

概要 会議テーマ 議題・論点説明 フロント紹介 大会企画 国選びのポイント

概要

議題(英語) Wrongful acts of International Organizations and its personnel regarding peace operations
(a) Criminal accountability of United Nations officials and experts on mission
(b) Responsibility of International Organizations conducting peace operations
議題(日本語) 平和活動における国際機構及びその人員の違法行為
(a) 国連職員及び任務中の専門家の刑事事件に対する責任
(b) 平和活動を行う国際機構の責任
議場 第70会期国連総会第6委員会非公式会合
扱う年代 2015年
設置国数(募集人数) 3ヶ国(ペアデリ)+24ヶ国(シングルデリ)=30人
ただし、議題それぞれにつき15人ずつの募集とする。
使用言語 公式:なし / 非公式:日本語 / 成果文書:英語
会議監督 北村光(東京大学法学部 3年)
副会議監督 南萌嘉(学習院大学法学部 2年)
秘書官 大内朋哉(東京大学法学部 3年)
河野朱音(慶応義塾大学法学部 2年)

国割

副議題(a) Criminal accountability of United Nations officials and experts on missionの設定国
Bosnia and Herzegovina
China
Costa Rica (also on behalf of Community of Latin American and Caribbean States)
Democratic Republic of the Congo(ペアデリ)
France
India
Iran, Islamic Republic of (also on behalf of Movement of Non-Aligned Countries)
Japan
Norway (also on behalf of Nordic Countries)
South Africa
Thailand
United States(ペアデリ)
European Union(オブザーバー)
United Nations Department of Peacekeeping Operations(オブザーバー、UNOLAとペアデリ)
United Nations Office of Internal Oversight Services(オブザーバー)※ペアではない

副議題(b) Responsibility of International Organizations conducting peace operationsの設定国
Cuba
Democratic Republic of the Congo(ペアデリ)
Denmark (also on behalf of Nordic Countries)
Ethiopia
Germany
Haiti
Israel
Micronesia, Federated States of
Netherland
Russian Federation
Serbia
Singapore
United Kingdom
United States(ペアデリ)
United Nations Office of Legal Affairs(オブザーバー、UNDPKOとペアデリ)

会議テーマ

模擬国連を再設計する

あなたは、「模擬国連」でいったい何をしているのでしょうか。もっともシンプルでミニマムな答えは、「国連会議のシミュレーション」でしょう。それでは、現在日本で行われている模擬国連会議は、果たして国連会議を「シミュレーション」していると言えるのでしょうか。

現在の模擬国連活動には、独自の要素、ルールや慣習が多すぎて、実際の国連会議とは乖離してしまっているのではないでしょうか。「シミュレーション」のひとつの方法でしかないはずのプロシージャや会議設定が、いつのまにか実際の国連会議を離れて、「模擬国連」という独立したゲームを構築してはいないでしょうか。

「模擬国連を再設計する」とは、以上のような問題意識を背景としたテーマです。既存の凝り固まった模擬国連会議の殻を破り、「国連会議のシミュレーション」として真に最適な活動を一から設計しなおすという考えを反映しています。

それでは、具体的にどのような「再設計」を施したのかについて説明します。
1. 非公式会合における一部の国による決議案の作成を中心とした会議とすること
2. いわゆる「政策立案」を排し、すべての国に共通する一般的な議論を行うこと

1. 非公式会合における一部の国による決議案の作成を中心とした会議とすること
今回の会議では、国連会議のプロセス全体ではなく、非公式の会合における一部の国による決議案の作成を模擬していただきます。実際の国連会議では、加盟国全体の会合より前に一部の国を中心として決議案がすでに作成されていることがほとんどでしょう。また、加盟国全体での会合で話し合われる内容はあくまでも形式的なものに留まり、実質的な議論や交渉は一部の国の間での非公式な話し合いの場で行われるのが一般ではないでしょうか。

現在の模擬国連は、国連会議のこのような性質を反映しているとは言えず、参加国全体での会合と一部の国の間での話し合いを小刻みに行き来するという独自の方式をとっています。今回の会議では、従来の模擬国連でいう「アンモデ」や「コーカス」にあたるような、一部の国の間での非公式会合自体を模擬します。総会の公式会合に提出する決議案を作成することを中心にし、総会がコンセンサスで受け入れられる決議案を作成するために議論・交渉していただきます。少数の国による実質的な議論を中心としているので、従来の戦略ゲーム的な模擬国連に苦手意識や違和感を持っている方でも、議題や背景をきちんと理解していただければ楽しめると思います。

2. いわゆる「政策立案」を排し、すべての国に共通する一般的な議論を行うこと
ここでは「政策立案」という言葉を、「各国が独自に考え、会議において提言する問題解決のための手段」のような意味で用いています。今回の議題は抽象度が高く、「政策立案」を行いにくいものとなっています。それは、総会の任務と合致しているとは言い難いような個別的な議論を避け、加盟国全体にかかわるより一般的な方針・規範・規則の合意を目指した議論を行っていただきたいからです。

現状の模擬国連会議は、議題・論点・会議設定が「政策立案」を要求するものであるがゆえに、各国がそれぞれ考えた政策を会議において提言し、それを決議案に載せることが目的となってしまっています。しかし、そのようなあり方は実際の国連会議とはかけ離れたものではないでしょうか。この会議においては、あえて議題を抽象的なものとすることで、実際の国連会議の議論へとより近づけることを志向しました。

求める参加者

「模擬国連っていったい何をしているんだろう」「こんな活動に意味はあるのか」といった、現状の模擬国連に対して違和感や問題意識を抱いている方の参加をお待ちしています。これまで模擬国連を楽しんできたけれども、ふと振り返ってみて漠然としたモヤモヤ感を抱いている方や、実際に模擬国連を離れ他の活動へと移られた方などがその例です。

逆に、「いまの模擬国連が楽しくて仕方ない」といった方や、「現在の模擬国連のプロシージャの下での戦略ゲームをしたい」といった方には、この会議は楽しめないかと思います。もちろん、いままでそのように模擬国連を楽しんできた方も、会議監督である私がそうであるように、上で記したような問題意識に至ることはあるかと思いますので、一度参加を検討してみてください。

また、問題意識や会議テーマに共感してくださる方であれば、比較的初心者の方であっても参加していただきたいと考えておりますが、この会議はテーマや会議設定、議題の都合上どうしてもある程度タフな会議となることが想定されるということはご留意ください。ただし、従来の模擬国連からそのシミュレーション方法を大幅に刷新し、実質的な議論を中心に据えていますので、会議経験が浅くても議題に対する深い理解さえあれば十分に楽しむことができる会議であると思います。

議題・論点説明

議題説明

「国連」と聞いて、あなたはどのようなイメージを持つでしょうか。完全な「世界政府」のイメージを持つ人は少ないかもしれませんが、地球規模の課題に対して取り組む国連の行動を「悪者」として捉える人はあまりいないのではないでしょうか。事実として、「国連」は様々な分野において一定程度の貢献をしてきたと言って良いでしょう。

しかし、「国連」もひとつの「組織」です。あらゆる「組織」の常であるように、不祥事や問題も起こります。日本においても、公務員が不祥事を起こしたり、政府の政策によって公害などの問題が引き起こされたり、といったことを考えればわかりやすいかもしれません。

「国連」によってなにかしらの被害や損害が引き起こされたときにどうするかが議題のもっともシンプルな課題です。平和活動が多様化・複雑化することに伴って、総会第6委員会において同様の議題が扱われることとなりました。

今回の会議では、「平和活動(peace operations)」に絞って「国連」の違法行為をどう扱うかについて議論していただきます。平和活動において起こりうる問題の最たる例は、現地住民に対する被害や損害でしょう。例えば、PKO要員による現地住民への性的搾取・虐待はボスニアやハイチ、コンゴ等で大きな問題になっています。ボスニアにおける大々的な人身売買、性的搾取・虐待は、国連関係者が多数関与したと指摘され、事件を基にした映画が作られるなどセンセーショナルに取り上げられました。

国連平和活動における被害や損害は、適切に追及されなければ平和活動ひいては国連そのものの正統性を損なうものです。国連の正統性という観点からは、次の2つの側面、「個人」と「組織」を併せて考えねばならないと言えます。
a. 被害を加えた要員の刑事的な責任が適切に追及され処分されること
b. 平和活動によって生じた損害が、しかるべき主体によって賠償されること

つまり、「被害を起こした個人の責任が追及されること」、「生じた損害に対して責任を有する国際組織による賠償が担保されること」の双方が、国連の正統性という観点から求められます。このような正統性と責任の観点から、
副議題
(a) 国連職員及び任務中の専門家の刑事事件に対する責任
(b) 平和活動を行う国際機構の責任

が設定されています。

会議においては、議場を2つに分割し、それぞれの副議題について円卓ごとに話し合っていただきます。副議題ごとに設定国も異なりますので、応募時にどちらの副議題に参加するかについて決定していただくことになります。ただし、副議題(a)(b)双方に設定されている国についてはペアデリとなります。また、円卓をまたいだ交渉も想定しているので、どちらの副議題に参加するにしても双方の副議題について理解しておくことが求められます。

参考までに(a)と(b)の特徴を説明します。副議題(a)は、平和活動に携わる多様なアクターについて、それぞれ異なった法的地位に応じて有効な処分の方法を検討してもらうものとなっています。副議題(b)は、国家責任と対をなす「国際機構責任」という概念を平和活動に応用してもらうものとなっています。「国際機構責任」自体が定まった概念とは言えず、より抽象的な議論が予想されます。

論点説明

論点について厳格にこちらから設定することはしませんので、あくまで参考としてください。

副議題(a)は、アクターごとに処分の方法を模索してもらう形式になるかと思います。具体的には、
・各国により派遣される部隊
・国連と直接の雇用契約を持つ文民職員及び軍事要員
・専門家やコンサルタント、国連により業務委託される民間軍事警備会社など、国連と業務委託契約のみ有する文民
・各国政府の文民、各国の軍隊に随伴する民間軍事警備会社など、国連と契約を有さない文民
といったアクターが想定されます。

副議題(b)については、国家責任と議論でなされる分類と同様に、一次規則と呼ばれる「(平和活動において)何が国際義務であるか」を扱う議論と二次規則と呼ばれる「その義務を違反した場合、いかにして責任が発生し、その責任はどのような内容か」という議論の2つに大別することが想定されます。また、その他にも、損害賠償を中心とする被害者救済のあり方や国際機構責任と加盟国の責任の関係についての議論が予想されます。

フロント紹介

ディレク自己紹介

東京大学法学部3年の北村光と申します。大学では国際政治を勉強しております。コーヒーを淹れること・飲むことが趣味です。フロントミートは毎回美味しいコーヒーを探す会と化しています。

ディレクにとっての模擬国連とは

模擬国連を始めたきっかけ
今では考えられませんが、入学当時は漠然と国連職員に憧れていたからです。すぐに興味は外交や国際政治へ移り、そのような観点から模擬国連を続けて今に至ります。

印象に残っている会議
一部の国とだけでも密に交渉をした会議が印象に残っています。お互いに相手のボトムを知りつつ、自分により有利な妥協点を探るといった交渉に、外交の体感や模擬国連の醍醐味を見出します。例えば、2013年関西大会のSDGs会議でのアメリカ大使との交渉、2014年関西大会の政治腐敗会議でのアメリカ大使との交渉、2014年全日本大会のサンフランシスコ会議におけるソ連大使との交渉などでしょうか。密な交渉、外交の面白さを実感したことは、少なからず今回の会議設計に反映されており、「すべての参加者が密な『外交』の体験をできる」ことを目指した会議設計を心がけています。

悔しかったこと
大使として参加した会議で言えば、1年生のときの関西大会です。当時の4年生にあたる先輩の足元にも及びませんでした。また、会議監督の経験はこれで3度目ですが、以前の2回については反省が多く残ります。特に、2年生の前期会議での設計の反省が今回の会議に大きく活きています。

その他模擬国連について語りたいこと
「国連会議をどうシミュレーションに落としこむか」という視点から模擬国連を考え直すことが多くなりました。今回の会議に色濃く反映されている通りです。

フロントからひとこと

【副会議監督】南萌嘉(学習院大学法学部 2年)
こんにちは。早稲田研究会老メンの南萌嘉です。会議経験もフロント経験も浅い身ですが、物事を突き詰めて考える特質を会議監督の北村君に買ってもらいました。この議題と会議テーマを、参加者の皆さんと一緒に考えていけるのを楽しみにしています。よろしくお願いします。

【秘書官】大内朋哉(東京大学法学部 3年)
秘書官の大内朋哉です!皆さんを全力でおもてなしします!

【秘書官】河野朱音(慶応義塾大学法学部 2年)
あなたのプロフェッショナルを発見し、これからの模擬国連の道を切り開ける会議を一緒につくりましょう!議場でお待ちしてます!

ディレクから参加者へのメッセージ

「模擬国連」について見つめ直す機会として、ぜひこの会議を検討してみてください。模擬国連の新たな可能性を探求し、限界まで深い議論や交渉が行える会議としたいと思っています。「再設計」のために、フロントも全力で向き合いたいと思います。

大会企画

概要

会議の中盤に議題として扱う分野の専門家をお招きして、作成途中の決議案の草案に対してフィードバックをいただこうと思っています。いただいたフィードバックを元に、参加者は決議案をさらに洗練させることになります。

狙い

専門家から意見をいただくことで、決議案の質を高めることが狙いです。「自国の主張を文言にして終わり」ではなく、外交交渉の結果としてアウトプットされた草案を、専門家のフィードバックによってさらに深い内容としていくことができるのではないかと思います。

従来の会議で起こりがちであった、「決議案の提出締切に追われ、まだ議論の尽くされていない決議案をとりあえず提出・採択する」といった事態から脱し、実際の国連会議のように一字一句に至るまで精査された決議案を作成することを意図した企画です。

国選びのポイント

国割の特徴

まず、会議設計上、国割に関して特徴的である点を3点述べます。1. 副議題とペアデリについて、2. 国連について、3. グループの代表国について、です。

1. 副議題とペアデリについて
副議題(a)と(b)それぞれで設定されている国が違う点にご注意ください。
ペアで応募可能な国は以下の3つです。
Democratic Republic of the Congo
Unites States of America
United Nations Secretariat

2. 国連事務局について
国連事務局については、副議題(a)に参加する方はDepartment of Peacekeeping Operations(DPKO: PKO局)を、副議題(b)に参加する方はOffice of Legal Affairs(OLA: 法律部)をご担当いただきます。ペアとして会議に臨んでいただくものの、ペア間で利益は若干異なりえます。また、一般の模擬国連会議で「国連」が設置される場合には、中立的もしくは国際益を追及する立場としてであることが多いかと思います。しかし、今回の会議では「国連」を扱う議題の性質上、国連は最も深い利害関係者であり、立場もかなり独特、偏ったものですので、ご注意ください。

また、副議題(a)には同じく国連事務局より、Office of Internal Oversight Services(内部監査部)が設定されていますが、内部監査という業務の性質上、他の部署からは独立していることが求められるため、DPKO 及びOLA とは合同ではなくシングルとなります。

3. グループの代表国について
この会議では、通常の国家の代表としての役割に加えて、地域・政治グループの代表も担っている国が設定されています。国名の後ろに、”also on behalf of … “と記載されている国があたります。

以上が国割について特徴的な点です。応募の際にはご注意ください。

各国の立場

以下では、各国の立場について、その大まかな傾向を分類しながら解説したいと思います。

はじめに申し上げておきますと、この会議では設定国数を減らし、ステークホルダーのみが設置されています。したがって、1カ国1カ国がそれぞれ特徴的な意見を持っており、統一的な傾向を述べることは非常に難しいのです。加えて、以下では便宜上観点を絞って2軸での分類としておりますが、実際には対立軸はより複雑です。そのため、参加者の皆様には、応募の際に予め希望国の立場について簡単に調べておくことをおすすめします。対応する議題についての議事録に目を通せば、希望国が実際にどのような主張をしているのかについてわかると思います。
副議題(a)については、
UN Doc. A/C.6/69/SR.17をご参照ください。
副議題(b)については、
UN Doc. A/C.6/69/SR.18のAgenda item 85の部分をご参照ください。

副議題(a)について
ここでは、次の2つの観点から分類を試みます。

・司法管轄権の行使に当たって重視するのは属人主義か普遍主義か。
司法管轄権とは、犯罪を犯した個人をどの国が訴追する権限を有しているか、という問題です。国連職員・任務中の専門家・PKO要員は、もっとも一般的な属地主義に基づく現地国の管轄権からの免除を認められているのが一般的 ですので、属人主義か普遍主義に基づく管轄権行使が議論されることになります。属人主義を重視する国は派遣国独自の対応を重視する一方で、普遍主義を重視する立場では国際機関や国際刑事裁判所等での対応を重視しています。

・PKO部隊の派遣国か受け入れ国か。
字義通りです。派遣国の中でも、問題を多く起こしている国とそうでない国があります。受け入れ国は概ねPKOによる性的搾取・虐待などの問題が発生したことのある国です。

国連職員 副議題a

なお、ここでは主として職員・専門家・PKO要員の刑事処分について想定しています。組織内での懲戒や免職といった人事処分についても、本議題との関連で対立軸が存在しますが、割愛します。

右上に位置するのは、普遍主義に基づく管轄権 行使を重視し、国連職員やPKO要員の犯罪についてすべての国の管轄権行使を可能にする、もしくは国際刑事裁判所で裁くことを可能にしようとする立場であるラテンアメリカやEUなどの国々です。
右中に位置するのは、PKOに多くの部隊を派遣する新興国です。当然、PKOにおいて自国兵士が問題を起こす可能性を内包している国になります。
右下に位置するのは、PKO派遣国の中かつ先進国の国々です。特にアメリカは、自国民が他国または国際裁判において裁かれることを忌避する傾向が見られます。フランスは、アフリカのミッションで問題を起こすことが多く、加害国としての立場が強いと言えるでしょう。日本については、憲法9条や安全保障法制との関連で「自衛隊」の役割について考えなければなりません。また、UNDPKOは、近年では対策の主要な責任を国連ではなく加盟国に負わせようとしています。
左側に属するDRCとBosnia and Herzegovinaは、PKOで実際に問題が起きたことのある国です。

副議題(b)について
次の2つの観点から分類します。
・PKO部隊の違法行為について、部隊派遣各国への帰属を重視するか国際機構への帰属を肯定するか。
「行為の帰属」に関する立場の違いです。PKOにおいて部隊が起こした行為について、部隊派遣国に責任を認めるのか、国連などの国際機構に責任を認めるかの分かれ目となります。

・「国際機構責任条文」の法典化に反対か賛成か。
第63会期で言及(takes note) された「国際機構責任条文」は、「国家責任条文」と同様に未だ条約としての地位を有していません。この条文を法典化し法的拘束力のある 条約とするのか、それとも今後の慣習法を発展させるための指針としての位置付けに留めるのかで立場に相違があります。

国連職員 副議題b

右上に属する国々は、PKOにおいて生じた問題の国連への帰属を積極的に認め、かつ「国際機構責任条文」を条文化する意思を有しています。国際機構の責任を積極的に問おうとする意思の強い国々であると言えます。

左上に属しているUNOLAは少し特殊な立場です。国際法委員会が作成した「国際機構責任条文」で示される行為帰属の基準よりもさらに進んで国際機構への行為帰属を肯定しようとしています。例えば、各国の指揮統制下にある部隊の行為についても、PKOの枠組みで行動しているならば国連への帰属が肯定されると主張しています。これは、「国連によるPKO」という、国連の活動として一体性を堅持しようとするためです。

右下に属する国は、平和活動において起こりうる問題について重く受け止めている立場と言えます。Denmarkは69会期の議論においても、国際機構責任についての検討は平和維持活動との関連で重要であるとの立場を示しています。また、Netherlandは、被害者の救済の実効性を高めるという観点から、(損害賠償などの救済の制度を何ら持たない)国連ではなく、部隊派遣各国への行為帰属を重視する立場です。

左下に属する国は、「国際機構責任条文」に対して懐疑的な立場です。IsraelやSerbiaは、自国内に平和維持活動が展開している関係から「国際機構責任条文」の中に含まれる「自衛」の考え方に懸念を持っています。
US, UKなども、「国際機構責任条文」は従来の慣習法を反映したものというよりも新たな法規則の作成を目指したものであるという見解を示しています。NATO等の軍事同盟の中心であるという立場上の理由や、国連を頂点とする指揮体系化に自国部隊を組み込まれたくないという思惑が関係していると言えます。