会議の選び方

 AJMUNでは、5つの日本語会議(議論を日本語で行う会議)と2つの英語会議(議論を全て英語で行う会議)を用意しています。英語会議には海外からも参加があります。
以下では、日本語会議と英語会議に分けて、会議選択のヒントとなる特徴をご説明いたします。会議の詳しい情報はHP「会議詳細」内の会議ごとにまとめているページをご覧ください。

                                会議総監督 松田大輝


○ 日本語会議
 本大会では、会議を通じて議題に真剣に向き合い、議論を深めていただくことを主眼に置いているため、まずは関心がある、議論してみたいと思う議題を選んでいただきたいと考えております。各会議では、その会議で焦点を当てる「問い」を議題とは別に設定していますので、そちらもご参照ください。
以下では、「何を模擬するのか」という点を切り口として、その他の観点から各会議の特徴を簡単にまとめましたので、会議を選択する上でのご参考にしてください。


「宇宙活動に関する国際行動規範」―「模擬国連」を正面から
1. 日本語会議の中でもっともオーソドックス
模擬国連の魅力やそれを通した学びを追求した会議設計となっています。しかし、同時に表層的な議論に終始しがちな模擬国連の欠点を回避し、実質的な議論に集中できるような工夫もされています。
2. 初心者にも優しく、上級者にもやりがい
リサーチ資料の提供やメンター制など、会議設計者によるサポートも充実しているため、知識・経験を問わず、模擬国連を楽しみながら議論を深めることができます。一方で、多様な論点があることからも分かる通り非常に奥が深く、上級者でも取り組みは十分です。
3. 二人で補い合いながら参加できる「ペアデリ制」
この会議は二人で一か国を担当する「ペアデリ制」を採っています(シングルデリでの参加も可能ですが、ペアデリでの参加を推奨しています)。そのため、一人で会議に出るのは自信がない方や先輩・後輩で出てみたい方などにもお勧めです。


「ヨーロッパ危機への対応」―「超国家」を模擬する
1. EUという特殊な地域機構の会議を模擬
通常の国際会議は主権国家が一か国一票を持って参加する会合で、一般的問題を主に扱うのに対し、EUは加盟国から主権を一部委譲された超国家的な機構で、その内部で起きる具体的な問題への対処をも考えなくてはなりません。そこでの決定は、直接的・即自的に問題の行方を左右し、自国に影響を及ぼします。また、今回の議場では、各国は人口比に応じた票数を持っていることも特徴です。広い視野で物事をとらえ、国益・国際益・EU益の三つの軸のどれを優先しどう行動するかという思考がカギとなります。
2. 様々な次元でEUの抱える難題と向き合える
会議の議題はギリシャ危機ですが、ユーロシステム自体の問題や難民・移民問題も論点として含まれ、EUの在り方から個別的な対応まで、イギリス離脱問題にも繋がるEUの根本的な課題に向き合うことができるものとなっています。
3. 自立的に会議行動をすることが求められるペアデリ
この会議も「ペアデリ制」を採用していますが、多角的な交渉を通じてEUの抱える様々な問題を把握し、対処を図らなくてはいけないという会議の性質があります。そのため、ペア間の一貫した行動とそれぞれの自立性が重要視されます。


「マスメディア宣言」―過去の、国際交渉の現場を、模擬する
1. 過去を振り返る「歴史会議」
この会議は、約40年前に行われた会議を模擬する「歴史会議」であり、冷戦期の国際情勢に触れながら、現代のメディアの問題にまで切り込める、奥行きのある会議となっています。こういった歴史会議にはリサーチが難しいという難点がありますが、この会議では必要な資料は会議作成者からすべて提供されるので、安心して会議に臨めます。
2. 実際の国際交渉の過程に迫る
本会議では「決議案の提出から投票まで」という会議過程の一部分のみを模擬します。模擬国連ではないがしろにされがちな、決議案が議場に提出された後の緻密な修正交渉にのみ注目することで、一言一句の調整にしのぎを削る国際会議の現場を体感しながら、問題に正面から向き合い、じっくりと議論することを可能としています。
3. 「国内調整」の求められるペアデリ制
この会議も「ペアデリ制」を採用していますが、ペアとして一致団結して他国との交渉に当たるだけでなく、ペアの中でも「国内調整」という形で、議論を活発に行うことが期待されています。


「NPT再検討会議」―国際政治を、模擬する
1. 現実の国際政治の複雑な利害関係を体感
NPT再検討会議は、「核兵器国 対 非核兵器国」という単純な構図には到底収まらない複雑な利害対立の場となっており、長年議論が膠着状態にあります。この会議が模擬することを試みるのは、そうした困難さそのものです。会議を通して、一国の代表として議論することはどういうことなのか、国際政治の現場がいかに微妙な均衡の上に成り立っているのかを知ることができるでしょう。
2. 「模擬国連」に徹底的に向き合う中で、核軍縮を見つめる
この会議では、「国連を模擬するとはどういうことなのか」を考えながら会議に臨むことになります。参加者それぞれは担当国の立場をなるべく厳格に再現して、議論することが求められます。模擬国連について見直すきっかけになるのはもちろんのこと、実際の国際政治の在り様に忠実でありながら、その枠の中で一体何ができるのかが問われる会議となっています。
3. 資料提供によるサポート
この会議では、参加者それぞれが自国の複雑な立ち位置を明確に理解した上で、会議に参加する必要があります。しかし、会議設計者の側から、それぞれの担当国の立場を知るための資料を提供するので、経験量やリサーチの得意不得意に左右されることなく、安心して会議準備を行うことができます。


「非承認国家」―架空の会議で、「空白」の議論を模擬する
1. 国連を越えた議論の場
この会議は「非承認国家」の扱いを議論するもので、実際にこうした会議が国連等で開かれたことはなく、近い将来もないでしょう。「非承認国家」とは、主権国家体制にできた、あってはならない「空白」であり、どの主権国家にとっても多かれ少なかれ触れたくないものであるからです。パレスチナなど、特定の「非承認国家」については会議が開かれていますが、ここではそうした例とは一線を画し、この国際秩序の異物そのものについて、正面から向き合います。
2. 忍耐力と高い思考力の追求
議題の難易度や資料の少なさから、この会議ではリサーチ段階から会議当日まで、忍耐力と高い思考力が必要になります。しかし、難易度が高い分、それだけ挑戦的であり、一つの問題に徹底的に向き合い、思考し、議論した経験は、きっと今後の糧となるはずです。
3. 国際秩序を問い直す会議
「非承認国家」の問題はその性質ゆえに埋もれてはいるものの、リサーチを進めれば、実は現在の国際情勢の中心的な課題であることが明らかになってくるはずです。この問題は国際秩序への問いそのものであり、本気で挑戦するだけの価値のある会議だということは間違いありません。


○ 英語会議
 二つの英語会議に関しても、まずは議題への興味関心から考えていただくのが良いでしょう。どちらも人権に関わる会議ではありますが、扱う内容は大きく異なっています。
 議題以外の点では、「求められる英語力」を気にされる方が多いと思います。以下では、その点に絞ってご説明いたします。

 全日本大会の英語会議には、英語に堪能で外国人との熱い議論を楽しみたい人から、英語に自信がなくてもとにかく議論に挑戦したい人まで、幅広い層の方に楽しんでいただけるものとなっています。日本において、多くの外国人と国際問題を議論できる貴重な場ですので、奮ってご参加ください。
 ただ、英語力に自信がなくても、より安心して参加できる会議を挙げるとすれば、「移住労働者の人権保護」の方でしょう。こちらの会議は「ペアデリ制」を採用しており、二人で助け合って会議に臨むことができるほか、会議準備段階から会議当日までの手厚いサポートにより、英語会議への挑戦を後押ししていきます。
 一方で、「宗教・信条に基づく不寛容及び過激主義への対応」の会議は「シングルデリ制」を採っており、参加者同士での活発で粘り強い議論・交渉が期待されています。もちろん会議設計者側からのサポートの下、英語力の高低に関わらず会議を楽しんでいただけるはずです。しかし、より挑戦的な体験になることが予想されます。